注目高まる旅行の「キャンセル保険」、第7波で契約件数7倍の保険も、その種類や動向を取材した

全国的に3年ぶりの行動制限のない夏休みとして、需要の増加が期待されていた今夏の旅行市場。実際、ゴールデンウィーク以降、夏の旅行予約は順調に入っていた。しかし、7月にはコロナ感染者数が増加に転じ、政府の全国観光支援の実施が見送りに。瞬く間に「第7波」に突入すると、予約回復の動きは鈍化した。一部旅行会社では、好調な予約推移が一転し、キャンセルが増加しているという。

ただし、過去の感染ピーク時に比べると、消費者のマインドは変化しており、ウィズコロナでも旅行を望む予約者も少なくない。そうした人に注目されているのが、旅行を中止する際の旅行代金・宿泊料金のキャンセル料や、旅行中に罹患した疾病の治療費を補償する保険商品だ。

例えば、損保ジャパンの子会社であるMysuranceの「Travelキャンセル保険」は、パッケージツアーや航空券、宿泊などの国内旅行について、万が一の事情で旅行に出発できなくなったときのキャンセル料を補償する保険。補償割合はキャンセル理由によって異なるが、本人や同行者、親族の死亡や入院・通院をはじめ、宿泊を要する業務出張や交通事故、ペットの犬猫の死亡など、対応するキャンセル理由は幅広い。

そして、その対象にコロナ感染時の宿泊療養や自宅療養、法令に基づく外出自粛要請の順守、濃厚接触者として健康状態の報告を求められた場合、参加予定のイベント中止や延期など、コロナに由来する旅行中止理由も含まれている。

さらに、「Travelキャンセル保険」に損保ジャパンの「国内旅行傷害保険」を組みあわせ、キャンセル補償と旅行中に感染した場合の一時金支払いを含めた「コロナあんしん旅行保険」(Mysuranceと損保ジャパンが共同開発)もある。

Mysuranceによると、直近(7月第4週)の「Travelキャンセル保険」の契約件数は、7月第1週に比べ、1.5倍に増加。「コロナあんしん旅行保険」の場合は、6.8倍と大幅に増加した。どちらの保険ともオンラインでの販売であり、販促体制は7月以前と同様であることから、Mysuranceでは「契約者は感染状況を踏まえ、自発的に『コロナ 旅行 保険』などの関連するキーワードで検索して両商品を見つけて、契約しているのではないか」(マーケティング部)と、ウィズコロナで旅行を予定する人々の不安と関心の高さを示唆する。

損保ジャパンによると、同社の会員を対象にした意識調査(2021年11月実施)で、旅行予約の際に不安を感じることに、「旅行先での新型コロナウイルス感染」(61.8%)と「緊急事態宣言やまん延防止等重点措置により旅行を中止する際のキャンセル料の負担」(41.2%)が多かった。コロナ禍ならではの理由で旅行予約に不安を抱えていることが判明したことから、キャンセル料と旅行中の感染に対する一時金支払いを含めた「コロナあんしん旅行保険」を開発したという。

旅行会社やホテル、チケット会社との提携によるキャンセル保険も

国内旅行のキャンセル料を補償する保険商品は、他の保険会社でも販売している。そのほか、旅行会社が保険会社とタッグを組み、旅行申込者を対象にしたキャンセル保険を用意して、受け付けているケースもある。

例えば、東京海上日動では近畿日本ツーリストやクラブツーリズムなどの旅行各社と、各社の国内ツアー予約者を対象に「ツアーキャンセル保険」を提供。ヤフーではヤフーサービスの専用保険「PayPayほけん」として、Yahoo!トラベルが「宿泊キャンセル保険」と「旅行キャンセル保険」をMysuranceと提供している。エイチ・アイ・エス(HIS)では三井住友海上と、国内ツアーと海外ツアー、海外航空券のキャンセル料を補償する「キャンセルサポート」を用意している。

保険会社がタッグを組むのは、旅行会社にとどまらない。AWPチケットガード少額短期保険ではチケットぴあと、イベント観覧・参加ができなかった場合にチケット代金を補償する保険を提供。ホテルニューオータニとも、宿泊キャンセル保険をパッケージ化した宿泊プランの販売で提携した。

一方、海外旅行に関しては、従来の海外旅行保険の疾病補償の範疇にコロナ感染を追加して対応している保険会社が多い。

いずれにしても、各保険や特約によって補償の内容や対象、条件等が異なる。自宅療養や「みなし陽性」も対象となるケースがあるが、補償を受けるためには医師の診断書や保健所・自治体が発行するコロナ罹患の確認書類など、各保険商品が定める証明書類の提出が必要だ。

行動制限のない3年ぶりの夏。旅行実施が旅行者の判断にゆだねられている中、キャンセル保険の存在は旅行者の不安のひとつを解消する一手といえそうだ。

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