エアビー、古民家の再生へ総額1億5000万円を寄付、「歴史ある建物」カテゴリーの拡充を狙う

エアビーアンドビー(Airbnb)は、地域の古民家再生の取り組みの一環として、全国古民家再生協会に総額1億5000万円の寄付をおこなった。全国古民家再生協会は、日本固有の建築技術の継承や再生による地域経済の活性化を目指しており、今回の寄付金について、30ヶ所の古民家再生に上限500万円を補助する。

全国古民家再生協会の井上幸一氏は、「国も空き家問題の解決の一つとして古民家再生に力を入れている。インバウンドが復活している中で、日本の伝統的な家屋を体験したいと思っている外国人旅行者は多い。Airbnbと共に、日本へのリピーターを増やしていく文化を作っていきたい」と話し、今回の寄付金の意義を強調した。

現在、全国の空き家は約1000万棟にのぼり、そのうち戦前の建築基準法で建てられた古民家は約1割の約100万棟が残棟していると言われている。井上氏は、再生に向けては「現在の耐震基準を満たすとともに、快適な住環境に改修していく」とした。

今回の寄付金に基づいた補助金では、全国47都道府県で20ヶ所、四国4県で8ヶ所、瀬戸内しまなみ海道エリアで2ヶ所を募集。Airbnbとしては、再生された古民家宿泊施設が同社のプラットフォームに登録されることを期待する。

Airbnbでは、昨年5月に「Airbnb検索カテゴリ」を導入。現在62のカテゴリからリスティングを検索できるが、その中で「歴史ある建物」は世界的にも人気があるという。Airbnb Japan代表取締役の田邊泰之氏は「ヴィラ、城など泊まりたい建物から行き先を決めるユーザーも増えている。検討もしたことがなった地域の発見にも繋がることから、旅行の分散化にも貢献できる」と話し、日本でも「歴史ある建物」カテゴリーの拡充に注力していく考えを示した。

古民家再生に力を入れるAirbnbは、無印良品を展開する「良品計画」とも協業。共同で古民家宿をプロデュースする取り組みも進めている。

新たに「Airbnbで古民家を活用しよう」の特設サイトもオープン。古民家活用に関心がある人向けにオンラインセミナーを開催するほか、古民家を含めた有休施設などの地域資源の活用と運営を展開しているGLOCALと連携し、古民家運営を検討している人を対象にAirbnbプラットフォームへの掲載などをサポートしていく。

井上氏は「Airbnbには世界から人を連れてくる力がある。地域で安心して古民家宿が運営できる協力体制がとれるようになった。訪日6000万人に向けた第一歩に繋がるのではないか」と今後への期待を示した。

Airbnb、地域課題解決の事例を横展開

Airbnbは、古民家再生を含め、地域創生事業に注力している。田邉氏は「コロナ禍で人との出会いが希薄になるなか、地方の人に会いに行くトレンドが生まれている。これは日本だけでなく世界的傾向」と説明。地域で「暮らすような旅」を求めるニーズは旅行者から生まれ、Airbnbはそれに応える形で地域創生に取り組んでいるという。

Airbnbは、コロナ禍でも様々な自治体や観光局との提携に乗り出している。田邊氏は「地域の課題はそれぞれ異なり、違うニーズがある。この1年ほどは手探りで進めてきたが、それぞれの地域課題の解決に資するホームシェアリングの事例を作り、今後はそれを横展開していきたい」と意欲を示す。

連携の成果も表れ始めた。2022年6月に連携協定を結んだ北海道清水町では、町長自らがホストになるなど行政が旗振り役を務めたことで、現在は20人ほどのホストが民泊を運営。これまでに220泊以上の集客に結びついているという。10月には大阪観光局と連携協定。田邊氏は「大阪万博を見据えて、関西地域での取り組みも強化していく。新たな事例を作っていきたい」と話した。

このほか、田邊氏はインバウンド市場の現状についても言及。昨年10月11日から個人客の受け入れとビザ免除措置を再開したが、「その発表があった9月から予約は増え始めた」と明かした。傾向としては、日本への旅行を待っていた人が多く、都市部から近いエリアの一棟貸しの需要が高いという。「今後は、地方での需要も増えていくのでは」と田邊氏。「Airbnb検索カテゴリー」では、日本独自の「旅館」というカテゴリーもあることから、「需要の分散化とともに日本らしい体験も提供できる」と自信を示した。

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