
日本政府観光局(JNTO)は、二国間の周年を契機とした訪日ブロモーション事業を強化する。2025年は、日韓国交正常化60周年、日・サウジアラビア外交関係樹立70周年、日・ブラジル外交関係樹立130周年を迎えることから、それぞれの市場で事業を展開し、訪日市場の底上げを図る方針。JNTOがメディアブリーフィングを開催し、今後のプロモーション内容を説明した。
韓国に向けては、地方誘客の促進を目的に「日本のお勧め小都市60選」を実施する。第一段階として、訪日韓国人の位置情報・人流データの分析や各都道府県との調整などをもとに選定したおすすめ小さな都市を47カ所を掲載する特設ページを2025年9月ごろに開設する。
また、第二段階として、「日本小都市」コミュニティを立ち上げ、、「日本小都市散歩キャンペーン(仮)」を実施し、コンテスト形式で消費者の旅行体験記を募集。その中から13ヶ所のおすすめスポットを選出する。
さらに、この事業に合わせて、2025年8月ごろにインフルエンサーを招請。地方の小さな都市への旅行の体験記を発信してもらうとともに、キャンペーンの周知を図る。
このほか、2025年11月~12月にかけて、韓国国内で参加者100人程度の特別イベントを開催することで、キャンペーンを通じた需要を喚起していく方針だ。
サウジアラビア、ブラジルでも
サウジアラビアでは、JNTOが2025年10月下旬から11月上旬に予定されている「リヤド日本祭り」に初参加。会場内に訪日観光PRゾーンを設け、観光情報の提供や伝統文化体験などの機会を提供することで、ゴールデンルートに加えて地域の魅力を訴求していく。
2024年のサウジアラビアからの訪日客は約1万7000人。まだ実数は少ないものの、GCC(湾岸協力理事会)加盟6カ国では最大で、富裕層も多いことから、JNTOでは潜在性の高い市場と位置付けている。訪日には査証(ビザ)が必要だが、2023年3月からオンライン申請が可能になるなど、訪日環境も改善している。また、次回(2030年)の万博は、リヤドが開催地となることから、現地サウジアラビアでも大阪関西万博を開催する日本への関心が高まっているという。
ブラジルでは、サンパウロの「Japan House」にツーリスト・インフォーメーション・デスクを設置。世界最大の海外での日本祭りイベント「サンパウロ日本まつり」ではJNTOブースを設けたほか、現地旅行会社・メディア向けにセミナーを開催してきた。2025年10月には、ブラジル最大の旅行博「ABAV EXPO2025」にもブースを出展する。
2024年のブラジルからの訪日客は前年の約5万人から約8万6000人と大きく増加した。2023年9月からは短期滞在ビザが免除され、日系人コミュニティの存在も大きいことから、JNTOでは準重点市場としてプロモーションを強化している。
2026年は、イタリア、フィリピン、シンガポールなどで周年を迎えることから、それを契機としたプロモーション事業を展開していく方針だ。
MICE開催件数は世界7位、地方都市での開催も進む
また、訪日市場の最新動向についても情報共有がおこなわれた。
2025年6月までの累計訪日旅行者数が過去最速で2000万人を突破したなかで、地方部での延べ宿泊者数は増加傾向。特に、2024年8月以降は2019年の水準を大きく超えて推移している。地方部での訪日客の伸びは、MICE市場で見られている。
ICCA(国際会議協会)の統計によると、2024年の日本全国でのMICE開催件数428件のうち、東京(97件)、京都(49件)、大阪(27件)のほか、札幌(24件)、福岡(21件)、北九州(15件)、仙台(13件)、金沢(8件)など三大都市圏以外での開催も目立った。対前年比の伸び率でも、三大都市圏が11%増に対して、その他の都市は28%増となった。MICEプロモーション部誘致推進グループ・マネージャー代理の直井辰徳氏は、「MICE開催都市が分散しているのが日本の特徴。大学や産業など地域の強みを活かした誘致が進んでいる」と説明した。
2024年の国際会議の開催実績428件は世界7位、アジア太平洋では1位。アジア主要5カ国での開催件数に占める割合は、2025年までの目標として政府が定めた3割以上をすでに上回る33.4%となった。日本ではテクノロジー分野の会議の開催が最も多く142件。米国(170件)についで2番目に多くなった。
今後は、2030年までに、アジアNo.1開催国として不動の地位を確立し、国際会議開催件数で世界5位以内を目指す。