
フランスのナタリ・ドラートル観光担当大臣が、2025年7月14日に開催された大阪・関西万博のフランス・ナショナルデーに合わせて来日した。2024年のフランスへのインバウンド旅行者は1億人を突破し世界トップ。消費額も740億ユーロ(約12.8兆円)に達している。来日したドラートル大臣は、トラベルボイスらとの共同インタビューで、2030年に向けた目標として「世界トップを維持していく」と意欲を見せた。
2024年の訪仏観光客の状況は、パリ五輪の特需やノルマンディ上陸作戦80周年、ノートルダム大聖堂の再開などのイベントに後押しされた側面があるものの、その勢いは今年も続いているという。2025年上半期の訪仏観光客数は、前年同期比で8%増になる見込み。トラートル大臣は「今夏もかなりいい状況が続くと予想している」と期待を示した。
今後注力する3つのキーワード
今後の成長に向けては、「サステナビリティ」「インクルーシブ」と「イノベーション」をキーワードとして挙げた。
サステナビリティについては、持続可能でバランスの取れた観光を目指すうえで、まずパリ以外の地方への観光客の送客と季節需要の分散化を進めていく方針。また、パリの一部の人気施設を除いては、オーバーツーリズムは発生していないとの認識を示しながらも、「(観光客の集中を避けるために)人数の制限、新しい観光地の紹介など予防的な措置をとっていく」と話した。
環境面では、脱炭素の取り組みに加えて、観光客の増加に伴う住民の配慮の側面から、水やゴミなど生活インフラの管理にも力を入れていく考えを示した。
インクルーシブでは、障がい者も含めて誰もが旅行ができる環境を整えていく。フランス国内でバカンスに行けない層への対応として、企業との協力で社員向けにバカンスバウチャーを発行する取り組みや、若者向けのバカンス・プログラムの復活、NPOを通じた母子・父子家庭の支援など進めていく考えを明らかにした。
イノベーションについては、トラベルテックに言及。AIを活用したツールで観光の管理や観光客のシームレスな動きを支援する施策を検討していくとしたほか、スタートアップを支援するプログラムを推進していく方針だ。
ドラートル大臣は、今夏の来日で広島にも立ち寄った
日本人旅行者に新しい体験を訴求
ドラートル大臣は、日本を訪れるフランス人旅行者が増えていることについて触れ、「日仏には、歴史、文化、食、職人気質などで共通の価値観がある」として、今後の観光交流の拡大に期待を寄せた。フランスを訪れる日本人旅行者については、依然としてコロナ禍前の水準には戻っていないものの、「ここ3ヶ月の数字を見ると、かなり戻ってきた。徐々に以前の数字に戻ってきている」という。
そのうえで、「日本人のニーズに応えるために、多様な商品を提供していく」と話し、パリやモンサンミッシェルのような有名観光地以外の新しい体験を訴求していく考えを示した。
「今まで体験したことがないことを紹介していく。フランスにはまだまだ魅力がある」とドラートル大臣。関西・大阪万博のフランス館に展示されている「スタジオジブリ」の巨大タペストリーに触れながら、それが製作されたオービュソンをその例として挙げ、万博が訪仏の機会にもなることに期待を示した。
万博フランス館に展示されたジブリの巨大タペストリー※ユーロ円換算は1ユーロ173円でトラベルボイス編集部が算出