世界のラグジュアリー市場で起きている「5つの変革トレンド」とは?  「所有」から「意味」に再定義される価値観【外電】

マクロ経済への逆風と地政学的な不安にもかかわらず、世界のラグジュアリー商品は、これに負けない力強さとイノベーションにより進化している。英調査会社ユーロモニター・インターナショナルでは、ラグジュアリーを再定義する変革トレンドとして5つの点に着目した。いずれもプロダクト中心から目的意識や体験主導のエコシステムへの移行を示唆しており、これからの成長には、価値の創造、感情の共鳴、人と人とのつながりが重要になるだろう。

何を所有しているかでラグジュアリーを語る時代は去り、どのように生き、感じ、つながるかが重視されている。

1. 変わりゆく価値観を捉える

高級感、職人技、歴史と伝統など、これまでラグジュアリーの証だったことが、今の消費者を満足させるには十分でない。求めているのは、より深い感情レベルでの共鳴やウェルビーイング、自分に合うライフスタイルであり、ブランドの掲げる理念が自身の価値観と同じかを見ている。

こうした変化に直面したブランド各社は、ウェルネス、体験、持続可能性、包摂性を重視し、より包括的な戦略をとるようになっている。ユーロモニターが2025年1~2月に実施した「消費者の声:ライフスタイル調査」では、高所得層の回答者の55%がモノより体験への支出を優先、71%が日用品の価格を懸念しており、価値の見極めに慎重になっている。

ブランド各社は今や、プロダクト中心の事業モデルから脱却し、より包括的で感情知性(感情を理解して適切に扱う知性)にも優れたエコシステムに移行する必要がある。

2. AIによる戦略の変革

AIは、ラグジュアリー商品を含むあらゆる業界を塗り替えるゲームチェンジャーになっている。飛躍的にパーソナライズが進むショッピング体験から効率的かつ持続可能なサプライチェーン、予測型のリアルタイム・マーケティング最適化まで、多くのラグジュアリー・ブランドがすでにAIを活用しており、状況に即、応じられるように役立てている。

なかでも生成AIは、予測型の設計、直感的なリテール・エンゲージメント、従来よりも深い顧客理解を可能にしている。

ユーロモニターの調査では、「ラグジュアリー業界関係者の67%が、生成AIのおかげで、ターゲットを絞ったキャンペーンが展開しやすくなった」と回答した。例えば、プラダやザランド(ファッション通販サイト)は、AI主導型のショッピング体験やマーケティング・キャンペーンを試行錯誤しながら、効率性と感情知性の両立を目指している。

3. ライフスタイル志向のラグジュアリーが台頭

ラグジュアリー産業は、ファッションやアクセサリーだけでなく、住宅、ウェルネス、不動産、さらに退職後の生活にまで進出している。

新たな需要のけん引役の一つが暮らしに余裕ある60歳以上の世代で、長寿、自律、包括的なウェルビーイングにつながる新たな解決策を探している。ラグジュアリーとライフスタイルの融合が進んだことで、ブランド各社はモノだけではなく、より深い、意識的なレベルで、消費者の共感を呼ぶ世界観やタッチポイント作りに取り組んでいる。

高級リタイアメントビレッジから神経美学(美を判断する脳機能などの学問)に基づく住宅デザインまで、消費者が求める全体的な調和がある暮らし、くつろぎとインスピレーションをもたらす空間を提供しようと、ブランド各社が動き出している。プライベートクラブ、ウェルネスクリニック、ハイブリッド型ショッピング施設の急増からも、こうした流れが伺える。

ライフスタイル全般へと事業領域を広げることで、高級ブランドは自社ポートフォリオを多様化し、飽和度は低いが長期的な消費者エンゲージメントが期待できる新しい収益源を獲得できる。

4. 気候変動対策にも積極的

サステナビリティは、もはや道徳や規制上の義務というより、利益を増やし、ライバルと差別化し、逆風にも強くなるための戦略的手段になっている。目下の不穏な世界情勢においては、なおさらだ。これをビジネス戦略の中核に加えることで、高級ブランドは他社との違いを際立たせることができる。

特に、世界のミレニアル世代とZ世代にとって、サステナビリティはもはや差別化要因というより、当然の期待値となっている。環境への意識は、その人のステータスの証で、自然やアウトドアを愛するライフスタイル志向はますます高まっている。

これに対しブランド側も、循環型モデル、製造履歴などを確認できる仕組み、(排出ガスの)ネット・ポジティブ戦略に取り組んでいる。様々な持続可能性の認証を取得した企業は、2020年以降、大幅に増加した。競争力向上というより、あらゆることに関わる価値観の柱としてサステナビリティを実現することが、新しい時代における真のラグジュアリーの姿だ。

ラグジュアリーとは、謙虚さ、調和、そして深い目的意識によって形づくられるものとなっている。また、ウェルネスと目的意識がもたらす未来には、それを支える基盤として、サステナビリティが欠かせない。

世界のサステナビリティ関連売上規模(2020-2024年)

5. ラグジュアリーな体験エコノミーの時代到来

ラグジュアリー関連の消費は、モノから体験へと移行している。2025年は個人の贅沢品支出額はわずかに減少したが、旅行、ウェルネス、ホスピタリティなど体験型の贅沢への支出額は増加した。

テスラが1日24時間/週7日営業のライフスタイル・ダイナーを開き、ジョー・マローンが高級スピリッツに参入するなど、企業が手掛ける製品の領域、場所、目的の境界線は薄れている。(家でも仕事場でもない)「第三のスペース」、小売店、ウェルネス、コミュニティが融合したハイブリッドな空間が台頭し、高級小売事業のあり方も見直しを迫られている。

経済的な価値だけでなく、体験の価値を重視する傾向は、ウェルビーイングに深く根ざしたものだ。ポジティブな経験は一生の思い出になり、感情のつながりや充実感をもたらし、メンタルの健康にも良い。動きが速く、ストレスも多い世の中で、有意義な体験を通じてポジティブな時間を提供できれば、幸福感はもちろん、より強い耐久力と感情のバランス管理にもつながり、それが結局、ブランドへの信頼とエンゲージメントを深化する。

体験についての消費者意識(2019/2025年)

「所有」から「意義」へ

ラグジュアリー業界は今、岐路にある。消費者が目的意識やつながり、ウェルビーイングを求めるようになるなかで、ブランド各社には、ステータスシンボルだけでなく、もっと深い意義を提供できるかが問われている。ラグジュアリーにおいて重要なのは、ロゴよりもレガシーになりつつある。これから支持されるブランドとは、新しい世代の価値観、すなわち真正性、持続可能性、感情知性について熟考しているところになるだろう。

ユーロモニターによる「ラグジュアリー商品のトップ5トレンド」レポートの詳細は以下へ。

https://www.euromonitor.com/top-five-trends-in-luxury-goods/report

※この記事は、英国の市場調査会社ユーロモニター・インターナショナル社から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Luxury Reimagined: Five Trends Reshaping the Global Luxury Goods Market in 2025

著者:Fflur Roberts氏 ラグジュアリー商品担当グローバル・インサイト・マネジャー ユーロモニター・インターナショナル

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