
世界で最高級ホテルコレクションとして知られる「Dorchester Collection(ドーチェスターコレクション)」の新ホテルが2028年に都内に開業する。場所は、三菱地所と東京センチュリーらが共同開発を進める「Torch Tower(トーチタワー)」の53階から58階。開業を3年後に控え、このたび同社幹部が来日し、日本市場への期待を語った。
※写真:同社副社長のフィリップ・モリス氏(右)とグローバルセールス・ディレクターのアラベラ・エル・バーコウキー氏(左)
世界6都市で10ホテルを展開
ドーチェスターは現在、そのコレクションとして世界6都市で10のホテルを展開している。ロンドンの「ザ・ドーチェスター」、パリの「ル・ムーリス」、ローマの「ホテル・エデン」、ロサンゼルスの「ビバリー・ヒルズ・ホテル」など、それぞれホテル名は異なる。2024年にはドバイに「ザ・ラナ」を開業した。東京のホテルは、アジア初進出となる。
世界的に超ラグジュアリーホテル・ブランドとして知られているものの、日本での知名度はそれほど高くない。そのなかで、今回の来日は、ステークホルダーとの信頼関係強化が目的の一つ。また、日本のインバウンド旅行市場が活況を呈していることから、同社グローバルセールス・ディレクターのアラベラ・エル・バーコウキー氏は「東京のマーケットの現状を理解するいい機会」と位置づけた。
2028年の開業に向けて、日本国内でも関係者とのミーティングやイベントなどを開催し、ドーチェスターの認知を高めていく考えだ。また、海外市場では、カンヌで開催される富裕層旅行商談会「ILTM」などの機会を通じて、東京の新ホテルをアピールしていく考え。
同社副社長のフィリップ・モリス氏は、開業後に「世界中のドーチェスター・ゲストが、東京のホテルのよさを世界に広めてくれるはずだ」と期待する。
ドーチェスター・コレクションの特徴とは
バーコウキー氏は、ドーチェスター・コレクションについて、「世界で最も特徴のある一流ホテル」と自負する。その特徴の一つとして、「ゲストとゲスト、ゲストとホテルスタッフとの気持ちのつながりが強い」ことを挙げた。平均のリピーター率は約40%。宿泊したホテル、あるいは同じコレクションのホテルに戻ってくる旅行者が多いという。
同社副社長のフィリップ・モリス氏によると、「安易に価格を下げないで欲しい」と希望するゲストもいるという。異なる旅行者層の宿泊は好まず、モリス氏は「それは一種のコミュニティのようなもの」と話す。
バーコウキー氏は、ドーチェスター・コレクションのコンセプトとして「We are not for everyone(特別な人たちのためのホテル)を打ち出している」と説明。モリス氏も、「競合は他社ではなく、コレクション内のホテル」と話し、各施設が唯一無二の存在であることを強調した。
特徴として、長年にわたって積み重ねてきた歴史も挙げる。これまでに世界的な著名人も宿泊し、その宿泊が伝説となっているという。「ドーチェスターのホテルに宿泊することで、ゲストはその伝説の一部になれる。それは他のホテルでは得られない体験」と話した。
さらに、ゲストに寄り添うパーソナライズされたサービスとホスピタリティにも自信を示す。ドーチェスター・コレクションでは、「The Ultimate Leaders Programme (ULP)」と呼ばれる人材育成プログラムを展開。部門横断の実践研修や国際的な合同トレーニング、メンター制度などを通じて、世界一流のホスピタリティに触れ、12ヶ月をかけてドーチェスターの質を維持し高める人材を育成している。モリス氏は、東京のホテルの開業に向けて、そのプログラムに参加できる候補者を募集することを明かしたうえで、「他のコレクションで学んだことを、東京のホテルに持ち帰ってほしい」と期待を込めた。
東京の「ソーシャル・ハブ」に
東京駅の正面に開業するドーチェスター・コレクションの正式なホテル名はまだ決まっていない。客室は110室を予定。モリス氏は、大部分は海外からの宿泊者になるとの見方を示したうえで、「客室だけでなく、洗練されたバーやレストランなども提供する。集う人たちが意義深い関係を築ける東京の『ソーシャル・ハブ』にしていきたい」と話す。
モリス氏は、世界の富裕層の定義は、変化していると指摘。経済的に裕福な層というよりも、「成功に向けて努力し、関心ある分野に情熱を傾け、確固とした生活スタイルを持っている層」であるとしたうえで、「そういった層は『本物』を求める」とした。
バーコウキー氏は、ドーチェスター・コレクションの各ホテルは、その地域に関連した「本物」を追求していると付け加え、東京の開業に向けて「ラグジュアリーゲストが求めているのは『リアル』。その意味でも、さまざまな『つながり』を大切にしていく」と強調した。