北海道全域で「観光消費を生む移動」とは? 北海道観光機構の挑戦と、「ひがし北海道」の事例に注目する理由を聞いた(PR)

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北海道観光機構(HTO)は、2025年6月に、新たに「観光インフラ部会」を立ち上げ、移動を核とした「観光インフラデジタルプラットフォーム」の構築を始めた。目指すのは、広大な北海道全域に観光消費を行き渡らせることだ。そして、旅行者が道内をスムーズに移動し、周遊観光ができる基盤整備に注力する。

この取り組みを進める上で、同機構が注目したのが、道東地域で展開されている「ひがし北海道観光DXプロジェクト」だ。

国の“日本版MaaS”の旗印のもと、全国各地で移動に関わる様々な実証事業がおこなわれている一方、社会実装から定着に至るケースは限られている。同機構ではこの状況にどう向き合うのか? その背景にある課題認識と定着に必要な視点、ひがし北海道のプロジェクトとの協働の可能性について、担当責任者らに聞いた。

北海道観光の課題を解決する手段として

北海道観光機構では、これまでも産学官による勉強会を通じてMaaS推進を検討し、各種提言を取りまとめてきた。しかし、その先の実装は現場の“旗振り役”が不在のまま停滞していた。今回、観光インフラデジタルプラットフォームの構築に舵を切ったのは、全道でのMaaSが進まない状況に向き合い、課題を整理した結果だ。

2025年4月に着任した事業本部本部長の廣岡伸雄氏は「これまでは、MaaSを構築するためのデジタルチケットやアプリ開発などが目的となっていた側面がある。しかし、本来は、観光消費の拡大という、当機構の目標に向けた手段として検討をはじめたものだ。そのため、あえてMaaS自体ではなく、北海道観光の課題の本質である“地域や季節偏在”の解決を考えた」と説明する。

北海道観光機構 事業本部本部長の廣岡伸雄氏北海道では、札幌を中心とする一部の都市や有名スポットに観光客が集中し、その他の地域への分散は長年の課題となってきた。訪日インバウンドが増えても「知名度があって、アクセスしやすいところを中心に観光されている」(廣岡氏)のが実情だ。道内各地では、移動の利便性を高めようと「地域MaaS」の取り組みも生まれているが、一般の観光客の認知や十分な集客を得るまでには至っていないケースもある。

廣岡氏は、その要因について「旅行者の行動と提供されているサービスがかみ合っていない」と指摘。「旅先への行き方を調べるときは、交通手段ではなく、経路検索から入る。その時、旅行者は問題なく必要な情報を得られているか。そこに、観光における移動の課題があると気が付いた」(廣岡氏)。

そこで打ち出したコンセプトが「北海道観光でストレスなく移動でき、地域の観光消費につながる仕組みづくり」だ。移動によって地域の観光消費が増えなければ、地域にメリットはない。旅行者にとっても、目的は移動ではなく、現地での体験だ。「だからこそ、移動と観光消費を掛けあわせた、トータルでのデータプラットフォームの整備が必要」との考えに至った。

この基盤を、同機構が運営する観光情報サイト「HOKKAIDO LOVE!」と連携し、自治体や地域のDMO、交通・観光事業者などが、ルート検索やコンテンツ開発、マーケティングなどで活用することで、最終的な観光消費拡大につなげていく方針だ。

観光インフラデジタルプラットフォーム 概要図

“AIフレンドリー”なデータ整備がカギ

では、プラットフォームはどのように整備していくのか? 重視しているのは、AIフレンドリーなデータ整備だ。

まず、交通事業者や観光事業者が、自社の運行情報や施設・地点情報を登録し、それを同機構が維持・運営。必要に応じて、事業者のデータ登録もサポートする。チームは廣岡氏のほか、AIの専門知見を有する吉井氏とSEからバス運転士に転身した加藤氏の構成で、観光と交通、デジタルの現場を理解したメンバーが揃う。

AIフレンドリーとは、旅行者にAIを含めて“検索される”形でデータを整備すること。グーグルマップ(Google Maps)に掲載されるためのGTFSデータ(地図や経路検索に表示される世界標準形式)の整備に加え、AIの回答に引用されやすくするための最適化(LLMO:大規模言語モデル最適化)にも取り組む。「人の情報収集は、自らの目によるウェブ検索からAIによる回答へと急速に移行している。AIが参照できない情報は、存在しないのと同じになりかねない」と、吉井氏は強調する。

多くの事業者が、交通の運行情報や観光施設の情報をPDFで公開しているが、現状ではAIが正確に読み取れないケースもある。その結果、観光施設が交通不便を解消しようと無料シャトルバスを運行していてもAIが案内せず、逆に他のウェブサイトでAIが参照できた「最寄駅から徒歩30分」といった情報を案内することもある。それは、旅行者が「行けない」と判断する要因になり得る。

裏を返せば、AIに正しく情報を届けられれば、その影響は大きい。同機構の観光情報サイトも、プラットフォームと連携して“AIフレンドリー”になることで、旅行者の北海道観光に関する質問に対して、AIの情報源となり、観光案内の精度向上が期待できる。旅行者が興味を持ったエリアの観光や行き方を調べる過程で、交通手段やデジタルチケットの購入へと、自然に導く。

「AIを介して、プラットフォームに登録された道内各地の移動手段と地域MaaSを間接的につなげることもできる。そうした形で、道内の観光に必要な情報が、シームレスにつながるような形を目指そうとしている」と、加藤氏は話す。

(左から)北海道観光機構 事業本部 観光インフラデザイン部 プラットフォーム担当部長の吉井直行氏、事業本部 観光インフラデザイン部 DX推進担当部長の加藤欽哉氏

「地域主導」の成功モデル、ひがし北海道観光DXプロジェクトへの期待

現在、観光インフラデジタルプラットフォームには、航空会社やバス会社などの交通事業者を中心に40社が参画。主要な市町村も加わり、さらに拡大する見込みだ。

次に力を入れるのは、各地に点在する多くの観光事業者に参加してもらうこと。そこで廣岡氏が注目したのが、道東地域で拡大する「ひがし北海道観光DXプロジェクト」だ。

本プロジェクトは、路線バスなど同地域の交通事業者と観光事業者が、共通のデジタル基盤のもとに連携。移動とタビナカの観光情報をあわせて提供するとともに、オンライン販売に取り組むことで、移動そのものを観光体験の入口に変え、交通DXを地域観光消費へと直結させる仕組みを構築している。

特筆すべきは、その広域性だ。釧路・阿寒から始まった取り組みは行政区を越え、根室、網走、知床、帯広へと拡大。地域全体の移動と観光を面的につなぐことで、観光客の動態を可視化し、需要を踏まえた誘導や周遊促進などに活用できる。各地域事業者の供給と観光客のニーズの整合を図る、広域需給マネジメントを目指している。

最大の特徴は、地域事業者自身が主役である点だ。NECソリューションイノベータの構想を受けつつも、中心となって動いているのは地域のバス会社であり、そこを核にタビナカの体験や飲食事業者が“輪”となって参画している。地域交通のDXを起点に、地域事業者が主役となって観光消費を最大化するモデルは高く評価され、2025年度「ジャパン・ツーリズム・アワード」の経済産業大臣賞を受賞した。

本プロジェクトには現在7社のバス会社のほか、約40社の事業者が参加。道東を超えて道北エリアにも広がり、北海道全体に“輪”を広げていく考えだ廣岡氏が注目する理由は大きく2つある。1つは、地域の事業者が主体となって、取り組みを広げていること。「システムを提供するNECソリューションイノベータは、あくまで裏方。地域の事業者がリードしている。それが成功のポイントだと考えており、当機構も、プラットフォームの裏方として参考にしたい」(廣岡氏)。

もう一つは、移動の先にある観光消費の創出の域に踏み込んだ取り組みになっていることだ。「移動と観光消費を含めたトータルのデータ整備の事例は、全国的にもあまり見られず、貴重な先行事例。観光消費拡大の仕組みをどう作っていくかは、来年度以降の課題だった」(廣岡氏)。今後、ひがし北海道の取り組みがさらに広がる段階では、同機構のプラットフォームや観光情報サイトと連携するなどして、「成功モデルを他エリアへ横展開する仕組みをともに作っていきたい」とも考えている。

同プロジェクトでは、特集記事やモデルコースを掲載する「ひがし北海道観光ナビ」も展開。体験事業者やガイド、飲食店等を移動とあわせて紹介し、地域の観光消費につなげる廣岡氏は、北海道でモデルケースを作ることで、地域交通と観光消費の拡大に悩む全国の自治体に、地域が主役になって消費を高めるモデルケースとして波及できることも期待している。

地域を支える観光インフラを強くするために

観光インフラデジタルプラットフォームの取り組みでは、「交通×観光消費データによる評価の仕組みづくり」も重視している。現在、函館や網走でバス移動による人流データを収集し、その路線が地域にもたらす経済効果を試算する実証実験を進めている。

運賃収入という物差しだけではなく「この路線があるから、これだけの消費が生まれた」という価値を可視化することで、交通事業者には路線を維持する意義を、行政には支援の適正化を、地域事業者にはプラットフォームへの参画のメリットを示す。実証に協力した函館バスや網走バスも、単独でこうした調査を実施するのは難しく、成果に期待を寄せているという。

構想段階から、着実に動き始めた同機構のプラットフォーム。2026年度から北海道で導入する宿泊税を活用することを北海道庁に提案している。実現すれば構築を本格化させたいと考えている。最終的なゴールは、同機構が観光振興戦略「北海道観光グランドデザイン」で掲げる2030年に総観光消費を3兆円とすることだ。

広大な北海道内での移動と観光をシームレスにつなぐ基盤は、地域経済を潤す「動脈」となる。北海道すべての地域が、観光による豊かさを実現するための挑戦が続く。

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問合せ先:gias-support@nes.jp.nec.com

ご参考:ひがし北海道観光ナビ

記事:トラベルボイス企画部

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