訪日中国人市場の攻略法2019、リピーター対策からマーケティング、越境ECまで最新事情を聞いてきた

2018年末、日中ツーリズム企業家倶楽部が中国訪日市場を考察する「日中ツーリズムサミット」を開催した。同倶楽部は、2018年12月に設立された日本で中国人旅行者向けインバウンド事業を展開する企業が集まった団体。現在の会員数は150名ほどとなり、今回ははじめてパネルディスカッションを中心としたイベントを企画した。

シートリップ、2019年は地方への送客とタビナカ強化

訪日中国人旅行者数は2017年は714万人、2018年の推計では800万人台の大台に乗った。訪日外国人数総数に占める割合も約4分の1と存在感は増すばかりだ。今、中国市場は日本のインバウンド戦略において欠かせないマーケットとなっている。右肩上がりで増加する訪日中国人だが、中国のアウトバウンド人口は1億3000万に達すると言われており、日本のシェアは約5.5%にしか過ぎない。

中国旅行市場のトレンドについてのパネルディスカッションでは、シートリップ・グループ日本代表の蘇俊達氏が同社の訪日市場の傾向について説明。2017年、中国人旅行者のなかで最も人気の高かった海外デスティネーションはタイで、日本は第2位。そのうち、北海道と大阪の人気が特に高かったという。また、属性については29歳以下が50%を占め、「特に学生のあいだで、日本のアニメ、漫画、グルメに対する関心が非常に高い」と明かした。

このほか、「最近では予約のリードタイムが短くなっている」と説明し、その理由としてリピーターが増えていることを挙げた。最近の傾向としては、日本は安全な国というイメージが強いため、ファミリー層のユーザーも増えており、そのなかでも女性に決定権があるという。

団体旅行から個人旅行へ、モノ消費からコト消費、都市から地方など中国人旅行者の旅行傾向が変化しているなか、蘇氏はシートリップとしては「2019年は、地方への送客とタビナカを強化していく」考えを示した。

(左から)シートリップ日本代表の蘇俊達氏、環球漫遊グループ社長の朴大勇氏、ネットスターズ社長の李剛氏、モデレーターのやまとごころ中国事業部長の王璇氏。

中国でのマーケティングは現地発でまとまった予算を投下

「中国人旅行者が日本に求める『今』」をテーマにしたパネルディスカッションでは、中国人リピーターについて議論。高級宿泊予約サービス「Relux」を運営するロコ・パートナーズ中国支社の門奈剣平氏は、リピーターを意識したマーケティングは行っていないとしたうえで、「1回の訪日で複数回の宿泊予約を促している」と戦略の一旦を明かした。同社の顧客層は上海と北京が中心で、30代女性の海外旅行好きがメインだという。

タビナカ・アクティビティの予約サイト「Voyagin」の高橋理志氏は、中国人リピーターの誘致について地方自治体から相談を受けているが、「台湾や香港と異なり、中国と日本の地方との距離はまだある」との見方を示した。

中国人向けに日本の飲食店予約サービスと決済サービスを展開している「日本美食」の董路氏は、中国人旅行者は日本の飲食店で「通じない、探せない、払えない」で困っていることを明かし、その問題を解決しているために、サイトへのリピート率は高いとした。さらに、中国人旅行者の客単価は高く1回の食事の平均は1万6000円。日本食への関心が非常に高いため、アップセルの機会も多いという。

中国でのマーケティング戦略についての議論では、董氏は、「コンテンツマーケティングが重要」と強調。世界に流れているオンラインコンテンツの6割が食に関することとしたうえで、同社では中国の主要SNSで日本の飲食店に関するコンテンツを毎日流していることを明かした。

高橋氏は、これまでは欧米がビジネス中心だったが、中国市場にも力を入れ始め、現在は中国現地のパートナーに商品を卸す事業も展開していると紹介した。

門奈氏は、当初は東京から中国市場を見ていたが、上海ベースでのマーケティング活動に戦略をシフト。「中国の提携先とのタッチポイントをつくるうえで、現地拠点は重要」との考えを示した。

さらに、中国人起業家の董氏は、ウーバーが中国で費やすマーケティング費は月1000億円にのぼることを紹介し、「中国では10億円では何もできない。中国でのマーケティングに莫大な予算が必要」と指摘。一度にマーケティングに投資する予算が限られているのであれば、時間をかけて継続的に展開していくべきだと付け加えた。

(左から)モデレーターのメルベイ中国インターネット研究所所長の家田昇悟氏、ロコ・パートナーズ中国支社の門奈剣平氏、Voyagin代表取締役の高橋理志氏、日本美食代表取締役の董路氏。

越境ECは日本企業にとって大きなチャンス

「いまならではの中国市場の攻略法」のセッションでは、越境EC市場について議論が展開された。

SNSのビックデータを活用したマーケティングをサポートするトレンドExpressの濱野智成氏は、先ごろ開催されたアリババの「独身の日」セールについて、「日本製は引き続き人気が高く。特に、花王、ユニチャーム、ドクターシーラボなどの化粧品類の中国人の購買力は高い」とコメント。ECはメーカー直販が強いと言われているなかでも、小売業のECも好調に推移しており、中国国内に店舗持つ百貨店などではO2Oでの顧客リーチに成功していると説明した。

また、越境ECサイトBOLOME日本を運営する陳少春氏は、ライブ中継で商品説明を行っていることを紹介。「テレビショッピングは衝動買いを促すが、ネットのライブ中継はメーカーや商品の信頼を高めるもの」と解説し、その信頼醸成によってECでも店舗と同じ価格での販売を実現しているとした。

バイドゥの國井雅史氏は「検索キーワードは、未来性のある予測」とし、今年11月の中国人による日本関連の検索キーワードトップ3として、1位ゲルマニウム、2位シチズン、セイコー、カシオなどの日本の時計メーカー、3位サッカーシューズを紹介した。また、昨年は、多肉植物や血統書付きペットなどニッチな検索が上位に入り、「意外なところにマーケットがある」と指摘した。

このほか、中国をマーケットとする越境ECに必要なことも議論。濱野氏は「中国人は行列ができる店に行きたがる」傾向を指摘したうえで、消費者動向のインサイトを掴むこと、継続的なマーケティング、投資が必要だとした。陳氏は、インフルエンサーやKOLを活用することの意義を強調。「ファンがたくさんいるインフルエンサーが使うだけで、その商品の信頼性は浸透する」とコメント。また、マーケットは沿岸部から内陸部に広がっていることから、「越境ECの未来は明るい」と期待を表した。國井氏は、客観的なデータを見ることの大切さ指摘するともに、「現地では中国人のスタッフを雇って、権限も渡して事業を展開していくことが肝要」との考えを示した。

(左から)モデレーターのやまとごころ社長の村山慶輔氏、トレンドExpress社長の濱野智成氏、バイドゥ中国ビジネスコンサルタントの國井雅史氏、BOLOME日本社長の陳少春氏。

取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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