マリオットとエクスペディアの連携はホテル流通を変えるのか? 格安OTA「アモーマ」の廃業から流通価格の課題を考えた【外電】

先ごろ、ホテルのオンライン戦線でびっくりする出来事があった。客室予約サイト「アモーマ(Amoma)」が営業停止を発表、「財務面で立ち行かなくなった」ことが理由としている。

OTAインサイト社が行った最新のホテル宿泊料の「レート・パリティ(価格の統一性。流通経路に関係なく、同じ客室は同じ販売価格であること)」に関する調査によると、アモーマはホテルの直接予約レートに比べて、割引率が最も高いケースがかなり多く見られた。

アモーマでは、直接ホテルと契約を結んで客室を仕入れるのではなく、ホールセーラーが在庫として抱える客室の一部を仕入れて売ることが多かったのではないかと推察される。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

ホールセーラーが抱える客室在庫が、OTAやメタサーチ経由で再販されると、ホテル側が受ける打撃は倍になる。ホールセーラーへの卸値だけでなく、消費者が支払う価格まで下がり、ホテルには大損となってしまう。

このように、予約価格が統一されていない状況(レート・ディスパリティ)は、ホテルの収益に大きな影響を及ぼす。今回、レート・パリティとは無縁だった流通チャネルのひとつが姿を消したことは、注目に値すると言えよう。

とはいえ、これで状況が改善されるとは思えない。理由を説明しよう。

再スタートは簡単だ

新しいOTAが登場しては、また消えていく。それがビジネスの日常だ。

第三者のアフィリエイト・ネットワークの力を借りて、商品をどんどん供給することは、そんなに難しくない。最近では、むしろ以前よりもハードルが低くなっている。あるOTAが商品の供給を絶たれたとしても、話は簡単。そのサイトは閉鎖し、別の新しいサイトを立ち上げればよいのだ。

ホテル客室を動かして利ザヤを得ている会社は、もちろんアモーマだけではない。

今回、アモーマというブランドは撤退したが、同じようなやり方で、利潤を得ようとしている企業はいくらでもある。アモーマの経営チームが、別の店をオープンする可能性もゼロではない。

2019年初め、OTAインサイトでは、どのホールセーラーがOTAに契約外の客室を流しているのか調査してみた。

その結果、特にひどいやり方をしているプレイヤーの多くは非常に小さな会社で、創業してまだ日も浅いところばかりだった。こうした傾向はしばらく続きそうだが、ホテル各社がもっとスマートに状況をモニタリングし、問題解決に向けて動き出せば、状況は改善されるはずだ。

悪いのはホールセーラーだけではない

レートの不統一が起きるのは、ホテル料金から利ザヤを抜こうとする悪者のせいではない(もちろん、まったく関係ない訳ではないが)。宿泊産業そのものが、こうしたやり方がまかり通るような仕組みになっている。それが現実だ。

ホテルブランドはたくさんあり、その多くは独立系で、横のつながりは極めて弱い。さらに、宿泊施設のタイプに関係なく、競争は厳しくなっている。

ホテルの供給が拡大し、市場が成熟するなか、例えば米国だけでも2015年以降、客室数は2万7000室以上増えている。さらに最近では、「オルタナティブ」と呼ばれる新しいタイプの宿泊ブランドが登場し、エアビーアンドビーなどでアパートメント型ホテルを販売している。競争が激化するのに伴い、これまでにないやり方が許容されるようになっている。

OTAインサイトが実施したレート・パリティに関する最新の分析は、対象期間が2019年1~6月のものだ。この結果から、欧州でも北米でも、ホテルと契約を結んでいる流通チャネルでさえ、価格は統一されていないことが分かった。

値下げが頻発する背景には、OTAがホールセーラーから客室を仕入れており、こうした客室をOTAに売るホールセーラーが、ホテルとの契約を守っていない状況がある。つまりアモーマが去ったからといって、価格の統一という問題は、解決されない。

構造的な見直しを

レート・ディスパリティの代表格だったOTAが1社いなくなり、ホテル各社はほっと胸をなでおろしたかもしれないが、マーケットにおける競争が落ち着いたと考えるのは早計だ。

OTA各社は、ホテル需要を掘り起こす上で、圧倒的な力を持つ流通チャネルとなっている。一方、消費者の間ではメタサーチが大人気なので、各社とも、最低価格を提供しなければというプレッシャーにさらされている。

こうした現状は、何も変わっていない。

本当の意味で、状況を変えるためには、ホテルとホールセーラーの関係を見直す必要がある。ホールセールというビジネスモデルの欠点が問題視されるようになるなか、在庫を卸さずに、自社で守ろうとするホテルが増えていくだろう。

ホールセーラーに頼り過ぎると、取り返しがつかないレベルまで値崩れするリスクがある、という認識がどんどん広まっている。

こうした時期に、まさに絶妙なタイミングで、マリオットがエクスペディアとの新しい提携を発表した。マリオットが直接契約していない相手に卸す客室のホールセール価格は、すべてエクスペディア・パートナー・ソリューションズを窓口として取引するという。

つまりマリオットと直接契約を結んでいない会社は、エクスペディアと交渉して、マリオットの客室を仕入れることになる。

マリオットといえば、直接予約システムや会員プログラムのキャンペーンに多額を投資してきたホテルチェーンであり、今回の決定は、大きな戦略の転換と言える。自社商品の価格と在庫のコントロールを手中に取り戻すためには、大手OTAとしっかり手を組む方が得策との考えだ。

在庫のコントロールを他者に任せるということは、その相手に対する全幅の信頼が不可欠だ。自社客室の在庫をしっかり管理したいと考えたマリオットは、それを第三者である仲介業者に委ねるという選択をした。これまで同社ではOTAを「フレネミー(フレンドだが敵でもある)」と見なしていたが、まったく違う方向へと歩み出した。

迷走するOTA各社が向かう先は?

まっとうな旅行ビジネスもたくさんある。ただ、このマーケットはゴチャゴチャしていて、動きが激しい。売上や流通を管理するマネジャーたちは、これまで以上に油断なく、価格破壊が起きていないかチェックしなければならない。アモーマがいなくなっても、同じようなことをやりたがるOTAはいくらでもある。

アモーマ廃業後も、同社の競合だったOTA各社は、これまで通りの再販ビジネスを続けている。アモーマは、そうした中で一番目立つ存在だったに過ぎない。

今後の注目ポイントは、ブッキングドットコムなど大手OTA各社が、マリオットとエクスペディアの提携にどう反応するかだ。両社による試みが、大手OTAにも多少のプレッシャーとなり、ホテルを悩ませる契約レート以下での販売が改善されることにつながるだろうか。

そして独立系ホテルはどうだろう。誰が味方になってくれるのだろうか?

ホールセールOTA業はまだ続く

アモーマで何が起きたのか、正確なところは明らかになっていない。事業からの撤退には、様々な事情があるものだ。

同社は閉業せざるを得なくなった要因として、OTAを非難するコメントを出していたが、詳細は不明だ。アモーマの事例だけを取り上げて、ホールセールOTAという業態の継続が難しくなっている、と結論づけるのも無理がある。

同社以外の「ホールセールOTA」各社にも、同じような未来が待っているのだろうか。これまでホテルが取り組んできたブランド認知度アップの施策や客室の再販対策が、効果を発揮するようになったのか。それとも、アモーマという名前が消えただけで、新しい別のブランド名で、同じことが繰り返されるのか?

アモーマは、ホテルから提訴されており、オンラインでの評判は非常に悪くなっていた。イメージ払しょくにかかる労力は膨大なので、いっそのこと、問題だらけのブランド名はさっさと捨てて、再出発した方が得策なのかもしれない。

大手OTAですら、ホールセール価格の客室再販については、特に何の流通施策も考えていないことがほとんどだ。

こうした現状について、「The Points Guy」によるアモーラ廃業を取り上げた記事では、鋭く批判している。「これがOTAの目指してきた未来なのか? お互いに、相手サイトの売上を食い合い、ひたすらマーケットシェア拡大を目指すのか? 利益や競争はどうなる? ホテルチェーンはこれでいいのか?」

「ホテル側は、宿泊客がこうしたサイトに近づかないよう、必死の努力を続けているが、大手OTAが赤字覚悟で、利益ゼロの仕入れ価格を出してしまったら、もうお手上げだ」(同記事より)。

アモーマが閉店しても、レート・パリティを巡る現状は変わらない。ホテルが本気で宿泊レートのレベルを維持し、値崩れを防ごうというのであれば、定期的に(オンライン販売サイトを)チェックし、問題があれば是正できるよう、とるべき措置を決めておくことだ。そして自社担当のアカウントマネジャーには、レート・パリティを重視していると強く訴えるしかない。

ホテルのレート・パリティを堅持し、客室価格を計画通りにキープするためには、常に警戒を怠らないことだ。プレッシャーを与え続けること、これが結局、ベストな結果を得るために、最も効果がある。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Wholesale changes in distribution: Marriott and Expedia in the spotlight, Amoma in the deadpool


著者:ジーノ・エンゲルス氏(Gino Engels)OTAインサイト社

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