小型旅客船の事業許可を更新制に、地域で安全性高める体制構築も、知床遊覧船事故対策検討委員会が提言

国土交通省は2022年6月10日、「知床遊覧船」の事故を踏まえて設置した「知床遊覧船事故対策検討委員会」の第4回会合を開催した。安全対策の強化と安心・安全な小型旅客船の実現を目的とするもの。

今回は、(1)「事業参入の際の安全確保に関するチェックの強化」と「旅客船事業者に相応しい安全意識の確保」、(2)「安全管理規定の実効性の確保」がテーマ。これらについて、国交省が作成した対策案が、おおむね了承された。

(1)では、限定沿海以遠(川や湖、湾内などの平水区域ではない)の小型旅客船・不定期航路事業者に対し、事業許可を5年ごとの更新制度とする案を提示。これは、軽井沢バス事故を受けて設けた貸切バス事業者の更新制度を踏まえたもの。新規許可と更新時に、5年間の安全投資や要員確保、教育訓練などの「安全運航計画(仮称)」の作成を義務付ける。法令遵守状況や事故歴・処分歴に応じた許可期間の短縮や審査の簡素化も検討する。

また、安全統括管理者(事業管理体制の統括管理者:経営者など)と運航管理者(運航管理の業務統括者:実務経験者など)には資格試験を創設し、2年ごとの更新制とする。

さらに、地域全体で安全レベルの向上を図る体制構築も促進。地域の小型旅客船の事業者のほか漁業関係者や自治体などで構成する「地域旅客船安全協議会(仮称)」を設置。連絡体制や気象・海象などの情報、運航可否判断などの共有から、ルール遵守の相互監視、教育・研修などの機能を持たせる。協議会は届出制だが、国交省が設置を推進。海上保安庁とも連携して、安全のための知見を共有する考えだ。

安全管理に客観性と明確性を

(2)では、知床の事故の核心は出航可否の判断、安全管理規定が遵守されていなかったという指摘もあり、実効性を確保するための客観性と明確性を保つ対策案が出された。

例えば、運航の可否判断は客観的な判断ができるよう、手順を具体化し、事業者には安全管理規定や運航可否判断のフロー図、日々の判断結果の公表を義務化する。また、運航管理における責任体制の明確化と安全管理規定の届出時における国のチェックの厳格化なども実施。各事業者が、安全管理規定や判断基準などを公表し、地域や旅客の目に触れるようにすることで、安全管理に対する緊張感を高める効果も期待している。

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