LCCタイガーエア台湾の会長に聞いた、急増する日本便の予約、地方路線とタビナカで台湾人旅行者を地方誘客

日本は2022年10月11日から、台湾は10月13日から、それぞれ水際対策が大幅に緩和され、ほぼコロナ前と同様に双方向の旅行が可能となった。今後、日台間の旅行需要の回復に合わせて、航空路線も復活していくと見られる。そのなかで、台湾のLCC「タイガーエア台湾」が、日本路線再拡充に向けて積極的に動き出している。同航空にとって日本は最大のマーケット。年末年始から来年にかけて、同社はどんな戦略を描いているのか。ケビン・チェン会長に聞いてみた。

タイガーエア台湾は10月16日、札幌(新千歳)/台北(桃園)線に週2便で新規就航した。コロナ前は、日本の15都市と台湾を結んでいたが、現在のところ、札幌を含め、成田、羽田、関西、名古屋(中部)、福岡、那覇の7都市へのフライトにとどまっている。

それでも、日台がほぼ同時に水際対策を緩和した反響は大きく、同航空の日台線の搭乗率は8~9割で推移しているという。チェン会長は「年末年始から来年の旧正月にかけて、台湾発の予約は殺到すると予想している。コロナの影響は大きかったが、これからの需要回復に自信を持っている」と話す。

タイガーエア台湾は、9月下旬に期間限定でお得な航空券の発売を開始。最初の3日間で、全体で約5万人の予約を受けたが、その中で最も多かったのは日本便だったことからも、「日本への旅行需要の高さがわかる」という。

重要な地方路線、個人旅行やリピーターを地方へ

今後の路線再開について、「日本の空港の受け入れ体制次第」とチェン会長。地方空港の人手不足が解消し、環境が整えば、いつでも再開したい意向を示す。札幌の新規就航に合わせて来日したチェン会長は、国交省と意見交換を行ったほか、仙台空港や秋田県などとも情報交換を行い、地方路線再開に向けて動き出している。

タイガーエア台湾は、コロナ前から地方路線への展開を積極的に進めてきた。コロナ禍で運休を余儀なくされた時期も、地方自治体との関係を強化。岡山県とは白桃とシャインマスカット、佐賀県とは佐賀牛、茨城県とは日本酒をPRするイベントを台湾で開催するなど、日台交流を続けてきた。

チェン会長は「台湾人旅行者は個人旅行化しており、コロナ後も地方への旅行者は増えていくだろう」と見込む。訪日台湾旅行者はリピーターが多く、大都市圏以外の旅行先への関心が高いという。2019年の訪日台湾人は約490万人で、中国、韓国に次ぐ3番目のマーケット。この水準に戻し、さらに上積みしていくためには、地方への誘客が欠かせない。

タイガーエア台湾は2020年、タビナカ体験予約「KKday」と戦略的パートナーシップを締結し、日本でのタビナカ体験へのアクセスを向上。特に地方都市滞在での満足度を高めることで、訪日台湾人の新しい旅のスタイルに応えている。チェン会長は「特にネット世代の若い旅行者には親和性は高い」と期待をかける。

日本人の訪台需要の復活に期待

一方、日本から台湾へのアウトバウンド旅行需要の復活への期待も大きい。2019年、日本から台湾への旅行者は初めて200万人を突破。気軽にいける海外旅行先として台湾の人気は根強い。チェン会長は来日に合わせて、日本旅行業協会(JATA)や主要旅行会社と意見交換。今後の需要促進で協力していくことを確認したという。また、プロモーションでは台湾観光局との協業にも意欲を示す。

コロナ前、年間700万人以上が交流した日台路線は、航空会社間の競争も激しかった。今後、需要が回復し、供給量も増えていくと予想されているなかで、チェン会長は、日本発の需要取り込みで最大の強みとなるのが地方路線の展開と話す。「誰でも最も近い空港から出発したいはず。インバウンドとは逆に、地方の日本人旅行者を直接台湾に運ぶことができる」と続け、戦略の一貫性を強調した。

加えて、旅行者にとって大きな負担となっている燃油サーチャージを徴収していないことにも触れ、競争力の高さに自信を示した。同社によると、タイガーエア台湾は会社設立以降、すべての路線で燃油サーチャージを徴収していない。

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