拡大するオンライン旅行予約のチカラ、アジア太平洋OTAの議論を聞いてきた

「トラベルポートLIVEアジア太平洋カスタマー・カンファレンス2016 現地レポート(1)

トラベルコマース・プラットフォームのトラベルポートがマカオで開催した「トラベルポートLIVEアジア太平洋カスタマー・カンファレンス2016」。そこでは、アジア太平洋地域で起こっているオンライン旅行の潮流について、テーマごとにパネルディスカッションが行われた。

「Online Juggernaut (オンラインの力)」と題されたディスカッションでは、主にオンラインブッキングの成長について議論。その力と将来の可能性について話し合われた。


パネリスト:
  • トニー・マ氏 Hutchgo CEO
  • ジェイソン・スイ氏 マルコポーロ・トラベルVP
  • ポール・ホワイトウェイ氏 スカイスキャナーAPACコマーシャル・デイレクター
  • 中村純氏 DeNAトラベル事業開発担当エグゼクティブマネージャー


「Online Juggernaut(オンラインの力)」パネリスト:  左から、DeNAトラベル事業開発担当エグゼクティブマネージャーの中村純氏、スカイスキャナーAPACコマーシャル・デイレクターのポール・ホワイトウェイ氏、マルコポーロ・トラベルVPのジェイソン・スイ氏、Hutchgo CEOのトニー・マ氏

APACで急速に拡大するオンラインブッキング

議論に先立ち、トラベルポートOTA担当ディレクターのミン・フン氏は、アジア太平洋(APAC)でのメタサーチの急激な成長に触れ、「それにともない、APACのOTAはローカルからグローバルになろうとしている」と指摘。潮流となりつつある「グローカル」という言葉で表現した。

APACの旅行分野におけるオンライン予約の伸びはすさまじい。特にモバイル化が進むに連れて、その成長は勢いを増している。香港のOTAであるHutchgoのマ氏は、「2002年に設立時は、これほど早くデジタルが成長するとは思っていなかった。APACでのオンラインブッキングの隆盛の背景には、経済の成長がある。それが海外旅行者を増やしてパイが広がった」と驚きを隠さない。

DeNAトラベルの中村氏は日本の現状について、「世代間交代が起こっている。インターネットから旅行情報を好んで取るデジタルネイティブな若い層が急速に増えた。シニアもデジタルを使うが、若者からは数年遅れている様子だ」と説明した。

2015年にローンチされたホテルOTAマルコポーロ・トラベルのスイ氏は、「APACで成功している理由は、一言で言えばローカライゼーション。地域のパートナーと協力関係を築き、ローカルで受け入れられるものに順応してきた」と話し、オフライン旅行会社とのパートナーシップがカギとの認識を示した。

メタサーチの未来は? タビナカ素材やエンタメも?

議論は、オンラインブッキングで大きな役割を果たしているメタサーチの話題に発展。価格比較が主流になっているメタサーチについて、中村氏は「あるデータによると、顧客の3分の2は価格重視するが、残りはそうではない。価格が唯一の決定要因ではないだろう。メタサーチが消費者の求めるものすべてをカバーしているわけではない。我々OTAはユーザーが欲する情報をどのように流していくかを考えるべき」と持論を展開した。

メタサーチが現在扱っている素材はエア、ホテル、レンタカーが中心だが、今後期待される素材には何があるのだろうか――?

スカイスキャナーのホワイトウェイ氏は「どれだけ簡単に予約に導けるかがまず大事。おそらく両替レートのサーチも可能だろう」との考えを披露。Hutchgoのマ氏は「デスティネーションサービスはメタサーチにとって非常に重要だと思う。タビナカの情報、エンターテイメントなども加えられるかもしれない。OTAにしてもホテルとエアだけを扱うわけにはいかなくなるだろう」と話す。

一方で、APACでのメタサーチの難しさにも言及。「APACでメタサーチを展開するうえでは、グローバルとローカルの問題がまだまだある。文化も言語も多様で、消費者の行動もそれぞれ違う。参入するのは簡単だが、そこで成功するのは難しい」と現場の声を代弁した。

会場では「メタサーチが次に扱うものは何か?」について投票が行われ、最も多かった答は「OTAではなくサプライヤーからくるコンテンツ」だった。

地域サプライヤーとのパートナーシップで巨人OTAに対抗

OTAとサプライヤーとの関係についての議論では、OTA3社ともそのパートナーシップを強調。中村氏は「OTAはなにも製品を作っていない。エージェントとしての価値は、与えられた情報を料理して消費者に提供すること」と話す。

また、スイ氏は「サプライチェーンの信頼性が増すことによって、OTAのビジネスも拡大していくと思う。コンテンツの競争力とサプライヤーの信頼性が重要。ハネムーンなど高額なものは、サプライヤーとOTAが協力しなければ、いいものは提供できないだろう」との考えを示した。

マ氏が強調するのが、やはりローカライゼーション。「エクスペディアなどの巨人に対抗するためには、グローバリゼーションのなかでのローカライゼーションの観点から、その地域の消費者がどういったものを求めているのかを常に考える必要がある。たとえば中国にはその地域に特化した需要がある」と話し、現地サプライヤーとの緊密な連携に商機があるとした。

グーグルやアリババは脅威ではない

最後には「グーグルとアリババ、どちらが脅威か」との挑発的な質問も。ホワイトウェイ氏は、よく尋ねられることだとし、「グーグルには常に注意すべきだが、その脅威は思っているほどではないのではないか。旅行業界は大きな業界だから、グーグルが独占することはないだろう。イノベーションを起こしていけば、グーグルに対抗できる会社も多いと思う」と発言。

マ氏は「グーグルやアリババが競合相手になっても、そこで我々が大切にしなければいけないのはパーソナリゼーション。柔軟性を持って地元に応えることだ」と主張した。

スイ氏は「我々はアリババとすでに密接な関係がある。一般的な商品でうまくいったからといって、旅行でうまくいくとは限らない」と強気の議論を展開した。

取材・記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹

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