デジタル健康証明アプリ「コモンパス」トップが語った、個人データの管理への自信と日常生活への導入、今後の課題は国際的ルールづくり

旅行デジタルの国際会議「トラベルテック・ショー」が2021年9月14日と15日にオンラインで開催された。今回のテーマは「ポスト・パンデミック期の不安材料」「進化するテクノロジー」「トラベル分野で台頭する新トレンド」の3つ。このなかで、旅行者のプロファイルデータに関するパネルディスカッションには、デジタル健康パスポート「コモンパス」を推進する非営利団体コモンプロジェクトからサイモン・トーリング-スミス社長が登壇し、コモンパスのデータ管理について説明した。

コモンパスとは、米ロックフェラー財団が資金提供し世界経済フォーラムと非営利団体のコモンズ・プロジェクト基金(Commons Project Foundation) が中心となり、37カ国の民間企業が参加して開発されたデジタル健康証明。旅行者の新型コロナウイルス検査結果を保存・認証するアプリで、出入国の際に目的地の入国要件に見合うものなのかを確認することが可能になるもの。世界各地で実証が行われ、日本発着の国際線でも実証実験が行われている。

トーリング-スミス氏は、改めてコモンパスについて「健康情報をプライバシーを守りながら提示することで、旅行の健全な回復を目指すもの」と説明。これまで、旅行者のプロファイルデータの収集は段階的に進化してきたが、新型コロナウイルスの発生により、個人の健康データが「突然必要になった」。

これまでは、欧州のGDPR(EU一般データ保護規則)も絡んで、決済情報など個人を特定できる情報「PII (Personally Identifiable Information)」の取り扱いが課題だったが、コロナ禍では個人の健康情報データを扱う必要が出てきたことから、「PHI (Protected Health Information)」がさらに敏感な課題になっていると指摘した。

「我々の挑戦は、誰が、どのように個人の健康データを負荷なく保管できるか、ということ」とトーリング-スミス氏は話したうえで、「コモンパスでは、個人情報は、データセンターのような機関ではなく、ユーザーそれぞれのディバイスのみで保管されるため、データ漏えいのリスクは低い」と強調した。ワクチン接種証明や陰性結果などは個人が管理し、それを航空会社、旅行会社、出入国管理などが承認する。

コモンパス社長のサイモン・トーリング-スミス社長

また、コモンパスは、航空分野に特化した「IATAトラベルパス」などと異なり、情報をQRコード化することで、レストランやイベントなど日常生活での入場認証にも活用することが可能な点も特徴として挙げた。

「QRコードやブロックチェーンなど新しいテクノロジーの登場は、個人のプロファイルデータの扱いを進化させ、日常生活を変化させている」とトーリング-スミス氏。英国では昨年9月に、国民健康サービス「NHS」のアプリにQRコード機能を追加。人が多く集まる場所での入場を認証することで、接触を追跡する取り組みを始めた。

一方で、トーリング-スミス氏は、コモンパスの普及について、「アフターコロナでの旅行をもっと簡単に行えるようにするためには、健康パスポートの国際的なルールの策定、PHI管理基準の標準化が必要」と課題も認めた。

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