タビナカ予約「クルック(Klook)」、インバウンド獲得へ本格始動、観光事業者向けデジタル支援など打ち手を聞いてきた

タビナカ予約クルック(Klook)の創業者兼COO(最高執行責任者)、エリック・ノック・ファー氏(写真)がこのほど来日し、2022年6月から始まった訪日観光客の受け入れ規制緩和に伴い、訪日インバウンド市場への取り組みを本格化する方針を明らかにした。

クルックの世界全体での月間ユーザー数(購入者)は、2021年11月以降、2019年の平均値を超えるようになり、2022年も4~5月は同プラスだった。特に海外旅行での利用が急増しており、5月最終週の海外旅行関連の売上は、2月初旬の6倍以上。現在、ユーザーの国別トップはシンガポール、次いで韓国、マレーシア、タイと続く。

ファー氏は「東南アジア各国の旅行者が向かう先は、バリ島やオーストラリア、アセアン域内。韓国は欧米など長距離が多く、鉄道パスのユーレイルパスがよく売れている。日本への旅行意欲も非常に高いので、訪日旅行の規制が完全撤廃されれば、インバウンド需要は間違いなく急回復する」との見方を示した。

回復期への準備着々、「デジタル決済」拡充

クルックではコロナ禍にあったこの2年間、様々なプラットフォーム拡充に取り組んできたが、なかでも最も大きな進化として、ファー氏が挙げたのは「取扱い可能な決済手段を飛躍的に増やしたこと」。多言語対応や取扱い通貨の多さには定評があったが、これに加えて、クルックのプラットフォーム上で利用できる電子決済を倍以上に増やし、現在は計35種類が揃う。

「例えばタイでは、ここ数年で、電子決済サービス、プロンプトペイ(PromptPay)が規模を問わず、あらゆる事業者で使われるようになった。特に東南アジア市場で、デジタル決済はすさまじい勢いで普及している。新しい決済サービスを中心に出現するエコシステムと連携することは、旅行産業全体の成長にもメリットをもたらす」(ファー氏)との考えだ。

一方、日本国内のインバウンド受け入れ事業者向けには、デジタル化を支援する “D2C”ツール「フリケット」を訴求していく。モバイル予約や入場時のデジタル対応、様々な通貨や決済手段の取り扱いを多言語でサポートする。 

すでにシンガポールのゲンティン・クルーズなどが、ホワイトレーベル形式でフリケットを導入しており、日本でも宇都宮動物園(栃木県)などで利用が始まっている。パンデミック以前から、同社が手掛けてきた様々なソリューションをもとに、汎用性の高い複数の機能を揃えた。

例えば、オンライン予約対策では、事業者が自社ブランドを冠した世界14カ国語対応のモバイル向けサイトを構築し、複数の通貨・決済手段で海外からの予約を受けることが可能になる。また、施設への来場者対策では、入り口に設置されたQRコードにスマートフォンをかざすだけで、予約情報を読み取り、eウォレットからの支払いが完了する「エクスプレスゴー!」を提供。利用客は、紙のバウチャーやクレジットカードを取り出す手間がなく、施設側も、外国語を話すスタッフ探しなどに悩まずに済む。

ファー氏は「日本は国内旅行のマーケット規模が充分に大きいので、インバウンド市場への取り組みは、どうしても最優先課題にはなりづらい。その結果、様々な調整に時間がかかってしまう」と見ている。

だが、渡航規制が完全撤廃されれば、一転して「人手不足や混雑、オーバーツーリズムが再燃することも懸念される。すでに世界の観光地でこうした問題が起きている」と指摘。こうした様々な課題をクルックのソリューションで解決し、訪日インバウンド市場の回復をサポートしていく考えだ。

訪日意欲は高いが、旅行時期は秋以降?

パンデミック以前の2019年、クルックを利用した訪日旅行者は410万人、インバウンド市場の13%を占めていた。その後、国内旅行に力を入れてきた同社だが、今年夏から、訪日インバウンド市場向けの「リディスカバージャパン・キャンペーン」を展開する。これまで国内旅行で連携してきた事業者などへ、今度は海外からの送客を支援する計画で、ターゲット市場は、海外旅行マーケットがすでに復活している東南アジア、オーストラリア、韓国。続いて秋以降、渡航規制の状況を見極めつつ、中華圏マーケットにも広げていく予定だ。

同キャンペーンに先立ち、クルックではこのほど訪日旅行に関する顧客調査も実施。日本政府が観光客受け入れを再開するなか、訪日旅行について、どう考えているか、との問いに対し、「いつでも出発できる」と答えた人は全体の46.3%、次いで「非常に関心がある」が30.7%となり、8割近くが好反応を示した。

ただし、訪日旅行を計画している時期については、「2022年の夏」との回答は数パーセントにとどまり、「2022年秋」が15%、「2022/23年冬」が22%、「2023年春」が21%となった。

日本での滞在期間については「6~10日」が最も多く58.4%。同社では、しばらく訪日できなかった分、以前より長い滞在を考えていると分析しており、レンタカーや滞在中に体験できるプランの充実に力を入れる。「日本で最も楽しみにしている訪問先」のベスト5は、東京(65.2%)、大阪(60.7%)、北海道(57.3%)、京都(45.3%)、沖縄(28.8%)。(訪日旅行調査の回答者シェアは、東南アジア47.5%、中華圏44.1%、オセアニア3%、欧米その他5.4%。)

ファー氏は、ポストパンデミック期の旅行トレンドとして、「滞在期間の長期化」「スケジュール変更ができるなどの柔軟性」、そして以前と変わらず「お得感」を挙げ、観光施設への入場券や宿泊を単品で扱うだけではなく、様々なものと組み合わせることで、競合他社との差別化を狙うと話した。

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