海外旅行での賢いネット接続とは? 「なりすましWi-Fi」のリスク、手持ちのスマホの活用法 -トラベルボイスLIVEレポート

2022年7月20日に開催した「トラベルボイスLIVE特別版」のテーマは、「60分で知る、海外旅行でのネット接続の賢い方法」。出演したテレコムスクエア取締役CEOの田村正泰氏が、モバイル通信の基礎知識からセキュリティリスクまで説明した。特に参加者の関心が集まったのは、フリーWi-Fiに潜む脅威 “なりすましWi-Fi”だ。

田村氏は、「ネット通信が生活の中で極めて重要なインフラになっているが、海外旅行でも通信の用途、手段、方法は変わらない」と指摘。「海外旅行でも訪日旅行でも、お客様に良い旅の体験を提供するための知識として、役立ててほしい」と話し、講演をスタートした。

“なりすましWi-Fi”とは?

日本人の海外旅行者は現地でネット接続をする際、どの端末を使っているのか。田村氏が紹介したJTB総合研究所の調査(2019年6月実施)によると、「日本からレンタルWi-Fiルーターを持っていく」(36.8%)、「ホテル等現地施設の無料Wi-Fiを使用する」(35.9%)の2つが抜きん出て多かった。

ここで田村氏は、フリーWi-Fiの利用について注意喚起をした。フリーWi-Fiのなかには悪意のあるWi-Fiがあり、それに接続すると、「通信傍受」と「不正アクセスを受ける」という2つの危険性がある。わかりやすい例では、悪意のあるWi-Fiでの接続時にIDやパスワードが必要なサービスを利用した場合に、それらの情報が抜き取られる可能性がある、というものだ。

田村氏は、空港やホテルなどが正式に設置しているフリーWi-Fiはおおむね安全であり、フリーWi-Fi自体を「むやみに恐れる必要はない」と説明。ただし、悪意のあるフリーWi-Fiは、正式なフリーWi-Fiと真似て同じネットワーク名称を使用しているケースが多く、正否を見極めるのが難しい。ネットワークの選択画面に、正式なフリーWi-Fiに続いて同様の名称で偽物のフリーWi-Fiが表示されることもある。

実際、田村氏は同社の顧客から、海外の高級ホテルチェーンに宿泊した際に、ホテルのフリーWi-Fiに接続したつもりだったのに、なりすましWi-Fiに接続しており、情報が抜き取られる被害にあったという話を聞いたという。

そのため田村氏は、「使い慣れていないフリーWi-Fiの安全性を判別することは難しい。特に初めての旅行先のフリーWi-Fiは、その1つ。基本的には、使い慣れないフリーWi-Fiには繋がないほうがいい」と話した。

プレゼン資料より(調査出所:JTB総合研究所「海外観光旅行の現状2019 ~好調な日本人の海外旅行と旅行者の姿~」)

SIM利用時の注意点

田村氏は、JTB総合研究所の調査で、日本人の海外旅行者のネット接続手段として3番目に多かったSIMカード(日本と現地での購入で22.1%)についても、通信の仕組みと注意点を説明した。

SIMの利点は、比較的安価で、手持ちのスマートフォンを使用できること。ただし、通信をするには、SIMロック解除と現地のSIMへの差し替えに加え、SIMの発行事業者に割り当てられた周波数帯(バンド)に、手持ちのスマートフォンが適合していることが必要だ。

端末は複数のバンドに対応しているが、そのうち1つしか対応しない場合、通信速度の低下やカバーエリアが狭くなる可能性がある。田村氏も過去の海外渡航時に、最初に購入したSIMでは接続できなかったため、別の事業者のSIMを購入して通信が可能になった経験があるという。

このほかの通信手段については、海外データローミングは、特に準備の必要がなく、手持ちのスマホをそのまま使える利点はあるが、契約や設定によって費用が高額になるケースが多い。日本人が最も使うモバイルWi-Fiルーターのレンタルは、事前の設定が不要であり、スマホの機種を気にせず接続できる利点があるが、端末の受取/返却の手間やルーターを携帯するために荷物が増えるデメリットもあることも説明した。

左から)テレコムスクエア取締役CEOの田村正泰氏、モデレーターを務めたトラベルボイスCEOの鶴本浩司

コロナ禍で増加した旅行中の通信利用ニーズ

田村氏によると、コロナ禍を経て顕著になった通信環境に対するニーズが、2つあるという。1つは「いつでも通信がつながる必要性」、もう一つは「大容量の通信」だ。田村氏は、「旅行は非日常ではなく、日常の延長」と話し、これらのニーズは海外旅行中にもあると話した。

例えば、「いつでも通信がつながる必要性」では、生活をする上で様々な手続きがデジタル化され、ウェブ、アプリでおこなわれるようになったことを説明。各国の出入国にかかる手続きなども同様で、「コロナ以降の旅行は、日本と同じように通信ができる環境がなければ不便と感じ、安心できないのではないか」と、海外旅行中に通信ができる必要性が高まっていることを指摘した。

「大容量の通信」に対するニーズについては、同社の海外用Wi-Fiルーターレンタルの利用実績を紹介。容量別(500MB、1GB、無制限/1日)の利用比率をみると、無制限の利用者は2019年は全体の20%ほどだったが、現在は半分を占めるようになったという。

田村氏は、「ビデオ会議では1時間で500MBくらい消費する。動画を見る機会も増えた。渡航中も、大容量の通信をビジネスで使用したり、観光中に動画で店やスポット検索をすることもある」と話し、通信環境の良し悪しが旅行中の行動や体験に大きく影響するようになったと説明した。

最後に田村氏は、旅行中のネット接続に必要なものとして、通信のほかに「端末の電池がある」とし、「大容量の通信をたくさん使うようになると、電池の消費も早くなる」と指摘。同社が開発したWi-Fi自動レンタル「WiFiBOX」は、モバイルバッテリーとしても利用できる設計であることを紹介した。

WiFIBOXの仕組みを説明する田村氏

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