日本旅行業協会、「海外旅行の復活」を最重要課題に、会長の新春会見で今年の取組み方針を聞いてきた

日本旅行業協会(JATA)は2023年1月10日、新春記者会見を開催し、会長の髙橋広行氏が旅行市場の現状と課題、今年の取り組みについて話した。

髙橋氏は旅行市場に明るさが出てきたとしながらも、主要旅行会社の取扱高は2019年実績の5割程度にとどまっており、「依然として厳しい経営環境が続いている」と強調。「海外旅行の回復なくして、旅行業界の復活なし」と述べ、今年の最重要課題に「海外旅行の復活」を掲げた。政府観光局や航空会社と連携し、海外旅行の機運を高めるための施策をおこなう予定だ。

一方、国内旅行と訪日旅行は「回復の道筋が見えてきた」としながらも、まだ回復途上にあるとの認識を示した。主要旅行会社の国内旅行の取扱高は2019年比で8割程度まで回復しているものの、「それは全国旅行支援の『特需』であり、実質的な回復軌道に乗ったわけではない」と主張。「本格的な回復には相当な労力と回復が必要」と述べ、全国旅行支援を「来年度以降も、細くてもいいので長く、可能な限り続けてほしい」とし、国に強く求めていく考えを示した。

訪日旅行は、昨年10月の水際対策の大幅緩和後に急速に回復しているとしながらも、残る「入国時のワクチン接種3回、72時間以内の陰性証明が足かせになっている」と指摘。「こうした規制は世界に類がない。基本的には国際基準にあわせるべき」との考えを示し、これが、企業の出張や海外教育旅行を含む日本人の海外旅行、地方空港の国際線再開にも影響を及ぼしていると話した。その解決策として、国が検討している新型コロナの感染症法上の位置づけについて、2類から5類への見直しを一刻も早く実現するよう、国に要請していく考えだ。

海外旅行は委縮したマインドからの解放が急務

高橋氏は、主要旅行会社の海外旅行取扱高は2019年比で2割程度に留まっていると説明。回復が停滞している背景には、円安や海外旅行費用の高騰など複数の外部要因があるとしながらも、根底には「この状況で海外旅行に行ってもいいのか」という委縮したマインドセットにある」と述べ、「これを解き放つことが、今後のポイント」と話した。

海外旅行の阻害要因の根本としてマインドの影響が大きいととらえた理由として、価格に左右されない富裕層が動いていないとした。「ヒアリングすると、感染が落ち着いていないときに旅行をすることへの世間の目や、旅行先での感染の可能性を心配する声が多い」という。高橋氏は、そこにブレーキをかけているのが、コロナの感染症法上の位置づけが2類であることとし、改めて、インフルエンザ相当の5類への見直しが重要であることを強調した。

なお、海外旅行の機運醸成を図る具体策では、政府観光局や航空会社と連携し、2つのプロモーションを実施する。まずは、早期の回復が見込まれるデスティネーションとして「韓国」「台湾」「ハワイ」と今年が日本との友好協力50周年の「ASEAN諸国」の4方面に焦点を当てたデスティネーション別の施策を実施。双方向の国際交流の流れを作り、海外旅行のムーブメントを起こしていく。

さらに昨年夏に「海外旅行復活宣言」として実施したような、全国的なプロモーションも実施する。そのタイミングは、「コロナの感染症法上の位置づけが5類に引き下げられた時」を想定。高橋氏は、「夏休みあたりには復活の足掛かりを作り、下期には回復の流れに載せたい」考え。2024年には本格的な回復軌道を確かなものとし、「かつての海外旅行2000万人需要を呼び起こしたい」と展望した。

希望をもって就職できる業界へ

会見では、現在の旅行業界が抱える共通課題として、人手不足と人材確保にも言及。マーケットが急回復するなかでも、旅館やホテルでは空室があっても十分な宿泊客を受け入れられず、貸し切りバスも空車があっても運転手がいないため、需要を逃している現状を共有した。

その解決の方法の1つとして、事業者が安心して採用活動がおこなえる環境づくりをあげた。観光産業は、コロナ禍で多額の借り入れをしている事業者も多い。髙橋氏は「経営の安定が見通せない限り、本格的な採用には踏み切れない」とし、安定的な事業環境づくりに向けても、全国旅行支援の継続やコロナの5類への引き下げを、国に要望をしていく考えを示した。

このほか、生産性向上に向けたDXへの取り組みや、将来の人材獲得に向けた取り組みとして「依然として観光産業が日本の成長産業の中心であることを示し、希望をもって就職できる環境を作る」と話した。

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