BtoBチケット販売管理プラットフォームのリンクティビティが、中華圏向けの訪日プロモーション支援(SNS)サービスを展開している。“中華版インスタグラム”と呼ばれるSNS「RED(小紅書:REDNOTE)」に注目し、2024年1月から同SNSを活用したプロモーション支援を開始。同年8月からは、東京スカイツリー(R)のアカウント運用の代行をはじめた。
観光商品の流通販売を支援する事業を主軸とするリンクティビティが、なぜ、訪日誘客のプロモーション支援を開始したのか。そのサービスの中身とその特徴は? 中華圏の若者に絶大な人気を誇る「RED」の特徴や東京スカイツリーでの成果など、両社の担当者に聞いた。
東京スカイツリーがREDで目指すものは
東京を代表する観光コンテンツである、東京スカイツリー。以前から、訪日プロモーションに取り組んできたが、中国市場への施策では課題を抱えていた。
同社では、これまで中国市場向けのプロモーションでは、コミュニケーションアプリ「WeChat」の活用や広告運用などをしてきた。しかし、東武タワースカイツリー(東京スカイツリー)コミュニケーションデザイン部主任の廣瀬裕香氏は「中国市場のトレンドや文化を正確に把握すること、そして、スピード感を持った情報発信が課題だった」と振り返る。中国では、インスタグラムやYouTubeなど、日本では一般的なSNSが使用されていないことも、現地のリアルなトレンドを把握するのが難しい要因だった。
そのなかで、リンクティビティとのコミュニケーションで「中国では、REDの勢いがすごいことを知った」(廣瀬氏)。そこで、東京スカイツリーはリンクティビティの提案に同意。2024年1月から、REDを活用したインフルエンサーマーケティングを開始し、同年8月にはREDの公式アカウントを開設して、リンクティビティに運用代行を依頼した。
両社は2020年から、リンクティビティのBtoBチケット販売管理プラットフォームで関係を構築しており、REDを活用した新施策もスムーズに始められたという。また、多国籍企業であるリンクティビティは現地を熟知する中国人スタッフも多く、「中国市場にアプローチする上で大きな強みになる」(廣瀬氏)と判断した。さらに現在、REDの日本拠点はないが、リンクティビティがREDの現地オフィスと密なコミュニケーションをとりながら運用代行をすることに安心感があった。
廣瀬氏は、REDでの施策の狙いについて「タビマエ、タビナカ、タビアトでの接点を増やし、認知向上からファン獲得、来場につなげること」と説明。東京スカイツリーがこの先も人気観光地であり続けるためには「継続的な情報発信が大切。スカイツリーの魅力を継続的に発信し、ファンを獲得することに注力している」と話す。
東武タワースカイツリー コミュニケーションデザイン部主任 廣瀬裕香氏
中華圏の若者が夢中になるREDとは?
REDとは、中国人のライフスタイルに根差したクチコミ共有アプリ。特に若者の利用が多く、中国国内に限らず、海外在住の中華圏のユーザーにも広く利用されている。「若者のインスピレーション生活百貨辞典」とも呼ばれているという。リンクティビティのプロダクト企画部マーケティングの陳怡文氏によると、「知りたいことがあれば、なんでもREDで検索する使い方が浸透している」。特にコロナ禍でユーザーが増加し、アクティブユーザー約3億人のSNSに成長した。
REDでの主なプロモーション手法のひとつは、KOL(Key Opinion leader)やKOC(Key Opinion Consumer)と呼ばれるインフルエンサーがコンテンツを発信するものだ。フィードに情報が流れ、興味を持ったユーザーが検索するという循環が繰り返されるため、認知獲得から動機づけまでをRED内で実現することが可能だ。
さらに、REDの特徴として、「ブランドページ」の表示がある。公式アカウントや関連ワードを検索した後、トップページに遷移する前に表示されるページだ。動画や画像を活用してアカウント側が最もアピールしたいメッセージを伝える広告のようなページで「伝えたいイメージをビジュアルで、目の付きやすい場所に発信できて良いと思った」(廣瀬氏)。ユーザー側も、企業や商品のイメージを掴む上で重視しているという。
リンクティビティ プロダクト企画部マーケティング 陳怡文氏
両社で東京スカイツリーの世界観を表現
陳氏は、東京スカイツリーに対するプロモーション支援について「販売につながることだけでなく、東京のシンボルとしての東京スカイツリーのメッセージを、どのように伝えていくかに一番注力している」と説明する。
REDでは、ユーザー、クチコミ投稿者、ブランドがRED内でコミュニティを形成するのが大きな特徴だ。ライフスタイル全般のSNSのため、日常の生活の中で「東京スカイツリー」に触れる機会が多くなり、東京の生活への関心と同時に旅行への動機づけが刺激される。
また、REDはコンテンツ内容やビジュアルの質も重視するため、その作成時にも、中国市場をよく知るリンクティビティの力は欠かせないと話す。
両社は1〜2週間に1回は、新しいコンテンツ作成や課題を洗い出すミーティングを実施。リンクティビティからは、中国での流行、拡散されやすい投稿などの情報を提供している。廣瀬氏は「運用していくなかで、配信結果を検証し、一緒に内容をブラッシュアップしながらアカウントを作り上げている」と話す。陳氏も「リンクティビティにとっても新しいビジネス。一緒にチャレンジしていける」と東京スカイツリーとの協業に期待している。
東京スカイツリーのRED公式アカウント
REDユーザーの特性にあわせたユニークな仕掛けでファン獲得
RED公式アカウント運用から約1年。東京スカイツリーはリンクティビティの提案で、様々な施策にも積極的に取り組んだ。
例えば、中国で街歩きが人気だというリンクティビティからの情報提供を受け、東京スカイツリーと周辺エリア(押上・浅草近辺)を組みあわせた街歩きに関するインフルエンサーマーケティングを実施。すると、実際に大きな反響があったという。
また、東京スカイツリーのショップスタッフが登場して、オリジナルグッズを紹介。廣瀬氏は、リンクティビティからこの提案を受けたときは、効果があるのか半信半疑だったが、「これまで、眺望に関して良い反応をいただくことが多かったが、グッズでも予想以上に大きな反響があり、新しい発見だった」という。「すごくかわいい」や「私も持ってる!」と訪日旅行時に購入した商品を写真付きで載せるなどのコメントが増えたことで、SNSならではのユーザーとのコミュニケーションも生まれた。
陳氏は「スタッフの人間性を通して、施設への親近感が醸成されたと思う」とその狙いを説明。消費者と直接コミュニケーションが取れるREDの特徴に触れた。
このほか、中国の全国統一大学入学試験の日には、受験生に向けてエールを送る仕掛けや、旧正月には中国語で「おめでとう」メッセージを発信。廣瀬氏は「現地の情報に詳しいリンクティビティならではのアイデアだと思う」と話す。
廣瀬氏は、これまでの成果を「フォロワーも順調に増えているし、エンゲージメントも安定している。フォロワーとのコミュニケーションもとれており、関心が高い内容も分かってきた」と強調。「東京スカイツリーのファンを増やし、行ってみたいと思ってもらえるよう、継続的に魅力の発信をしていきたい」と意欲を示す。
リンクティビティは、本プロモーション支援(SNS)サービスを、同社のBtoBプラットフォームの付加価値として、連携企業に対する販売支援の一環として考案した。そのため、基本的にサービス提供の対象は連携企業を想定しているが、「必ずしもその限りではない。関心を持たれたら、気軽に問い合わせをしてほしい」(陳氏)という。
今後はREDでの施策から得られるデータ活用や、同社の多国籍性を生かした他市場向けのプロモーション支援の展開も視野に入れている。
対象サービス:中華圏向け訪日プロモーション支援(SNS)サービス
問い合わせ:info@linktivity.co.jp
記事:トラベルボイス企画部