日本観光振興協会、観光戦略の策定に役立つ基礎データを可視化、DX支援セミナーで操作体験、NECの直販システムも

日本観光振興協会(日観振)はツーリズムEXPOジャパン2025の会場で、「観光DX支援セミナー」を開催した。観光地経営の戦略策定と販売の2つの観点で、地域の課題解決につながるソリューションを提案した。

戦略策定に役立つソリューションでは、同協会が提供する「日本観光振興デジタルプラットフォーム」(デジプラ)を紹介。観光関連データを集約・共有し、ダッシュボードで分析・可視化することで、地域観光に携わる自治体・組織や事業者のエビデンスに基づく施策立案やマーケティング、誘客を支援する。

基本機能には、観光客の属性や消費動向、地域間比較など、基本的な分析項目が標準設定されており、ユーザーが分析したい地域と項目を選ぶだけで、自動で分析結果を可視化する。今回は、概要の説明に加え、実際の操作体験の機会も提供した。セミナーで、デモンストレーションまで実施するのは珍しいという。

日観振理事の田中剛一氏(写真上)は、デジプラには同協会が保有する日本最大級の観光情報と調査データに加え、コンソーシアムメンバーによる人流や購買などのビッグデータ、行政機関の統計データなど、膨大な量と種類のデータが集約されており、それを簡単に扱えることを強調。「多角的に分析し、一気に可視化する。実際に触れて理解を深めてもらえるよう、デモの時間を設けた」と説明した。

ジャパン・ツーリズム・アワード受賞の取り組みで基盤となる直販システム

観光販売では、NECソリューションイノベータで観光DX事業を立ち上げた川村武人氏が、「直販システムを活用した地域の観光DX」をテーマに講演した。

同社は、持続可能な観光の取り組みを表彰する「ジャパン・ツーリズム・アワード」で、今年度の経済産業大臣賞を受賞した「ひがし北海道・交通事業者がつなぐエリアまるごと観光DX」を構想し、基幹となる直販システムを提供。持続可能な収益モデルによる観光地づくりを支援している。

川村氏は、同社が観光DX事業を推進する背景として、現在の観光が大都市や有名観光地に観光消費が偏在する課題があると指摘。地域の観光コンテンツやその情報が消費者に届きにくい構造や、地域交通を利用する際の不便さを解決するためにも「タビナカの地域事業者のデジタル化を支援し、販売につなげることが重要」と説明した。

地域の観光DXを目指しても、各事業者が個々にデジタル化に取り組む場合は、その進度に格差が生じやすい。そこでNECでは3年前から、地域の中規模事業者がハブとなり、各事業者が共通の直販システムを導入する地域一体でのデジタル化を推進。それにより「誰も取り残さず、面的なDXが進んだ」と話した。

現在、ひがし北海道ではバス事業者5社、地域事業者42社が参加する広域観光の展開に成功。地域の観光販売を取りまとめたウェブサイトを開設してバスの移動と地域の観光をつなぎ、相互送客も実現した。これにより、地域の公共交通の維持とエリア全体の収益向上につながっている。

さらに川村氏は、今後、地域の観光消費を拡大するためには「消費単価の向上が不可欠」と説明。富裕層に対応する地域ランドオペレーター向けに、生成AIを活用した地域のオーダーメイドツアーが提供できる仕組みの構築にも取り組んでいる。

NECソリューションイノベータ イノベーションラボラトリ ディレクター 川村武人氏

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