新たに「観光産業キャッシュレス推進協議会」設立、精算業務の効率化、業界内でのデータ共有などを目指す

2025年10月1日、観光産業のBtoB決済でのキャッシュレス化を推進する目的で、「観光産業キャッシュレス推進協議会」が設立された。業界有志による勉強会での見解をまとめたうえで、経済産業省及び観光庁の指導のもとに、具体的な活動を進めていく。人手不足のなか、持続可能な観光の流通体制を確立するためには、最新のデジタル技術を活用した決済の仕組みが必要との考えを共有する。

会長は阪急交通社社長の酒井淳氏、副会長にはクラブツーリズム社長の酒井博氏と読売旅行社長の岩上秀憲氏が就任。事務局長は、エアプラス社長の岡田健氏が務める。

このほど開催された設立記念の懇親会で、会長の酒井氏は「まずは第一歩。これからが非常に肝心」と挨拶。そのうえで「観光産業の供給チェーン全体で生産性を高める仕組みを構築していきたい。今後、多くの企業・団体にも参画してもらい、議論を深め、業界を超え、次世代に向けた仕組みを作る場にしていきたい」と意欲を示した。

観光産業キャッシュレス推進協議会会長に就任した酒井氏

協議会では、地方自治体などの協力も得ながら、運輸、旅館、飲食、観光土産など幅広い関連企業・団体に参画を呼びかけ、B2B決済の効率化、決済サービス事業者との互恵関係構築を戦略的課題として、サプライチェーン全体が潤う取り組みを議論していく。

また、5つの目標を掲げて活動を進める。まず、精算の効率化として、商流内での現金取引をなくすことで、すべての関係先の精算業務を軽量化していく。また、旅行会社ごとに異なる仕様を統一することで、業務の簡素化や効率化を進める。

さらに、日本の観光サプライチェーン全体で公平な取引を目指し、全体の生産効率を引き上げていく。内外の犯罪行為から事業を守り、安心安全な取引環境を確保していく。このほか、精算データを蓄積し、各社の経営に有効活用していく。

協議会では今後、テーマごとに課題を協議する分科会を設置し、実効性のある議論を進めていく考え。すでに、添乗員問題対策分科会は活動を開始しており、具体的な議論を始めているところだ。今後、早期に統一規格を検討し、実証実験などを通じて実現化していく。

2024年のキャッシュレス化は43%

日本でのキャッシュレス化は急速に進んでいる。経済産業省によると、2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%。政府目標の4割を一年前倒しで達成した。決済総額は141兆円。その内訳は、クレジットカードが116.9兆円(82.9%)、コード決済が13.5兆円(9.6%)、電子マネーが6.2兆円(4.4%)デビットカードが4.4兆円(3.1%)。

経済産業省商務・サービスグループ商取引・消費経済政策課長の乃田昌幸氏は、「キャッシュレス化による消費者の利便性の向上、加盟店の売上増加、業務効率化などを見込む一方で、効果の認知拡大、低料領域におけるキャッシュレスの利用拡大、加盟店手数料、不正利用対策など様々な課題がある」との認識を示したうえで、将来的には、世界最高水準のキャッシュレス決済比率80%を目指していくとした。

日本のキャッシュレス状況を説明する経済産業省の乃田氏

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