日本旅行業協会(JATA)は2025年1月8日、新春記者会見を開催した。会長の髙橋広行氏は、円安や物価高が続く現状に「この環境を与件として受け止める」とし、「価格ではなく、価値で選ばれる産業へ変革し、次の飛躍につなげる年にしたい」と意欲を示した。
その核とするのが、旅行会社の「企画力」だ。特に、2025年の日本人の海外旅行者数は、2024年比1割増を見込むが、2019年比では依然として7割台にとどまっている。髙橋氏は「まさに旅行会社の真価が問われている」と述べ、例として韓国の地方の町・咸安(ハマン)の伝統的な火祭りを見るツアーを紹介した。韓国観光公社と連携し、日本人専用の「ジャパンデー」を設定して会員各社で共同販売した結果、1日のイベントに1000人を送客。「低価格が主流となっている韓国旅行で、価値で選ばれる旅行に変革できた画期的な例」と強調した。
また、訪日インバウンドに関しては、過去最多の旅行者数が続く一方で「地方分散が喫緊の課題」と指摘。地方分散につながる、新たな観光商品や周遊ルートの開発には「地域を知り尽くした旅行会社の出番」と話した。地方分散の策として、特定の周遊ルートを複数年、集中的にプロモーションをする「訪日版デスティネーションキャンペーン」のような取り組みを実施することも、国に提言しているという。
さらに、JATAとして訪日インバウンドを会員各社の事業の柱の1つになるよう、取り組む考えも示した。現在、主要会員でも総取扱額に占めるインバウンド比率は約6%にとどまり、ノウハウのない会員も多い。しかし、髙橋氏は、訪日インバウンドが拡大するなか「JATA会員も関わるべき」との考えを示し、この文脈でも地域に根差す旅行会社の企画力・開発力が武器になるとした。専業や総合旅行会社などインバウンドに取り組む会員のベストプラクティスを共有し、会員の本格参入に向けたサポートをする考えだ。
2026年のキーワード:アウトバウンドの国策化や大型イベントなど
4月には、新たな観光立国推進基本計画(第5次)がスタートする。同計画では、初めてアウトバウンドの拡大が盛り込まれる見込みで、髙橋氏は「柱の1つになるような動きがある。極めて画期的」と期待を寄せた。また、パスポート発行手数料の引き下げの方針については、旅行業界として歓迎。一方、あわせて検討されている国際観光旅客税(出国税)の増税については、ネガティブな影響を懸念しながらも「大きな観光財源が生まれる。海外旅行分野で活用されることを重視している」と述べ、使途を国に提言をしていることを明かした。
イベントの追い風もある。2026年は米国建国250周年の年であり、二国間交流も強化。同国での野球の世界大会「WBC」や北米3カ国でのサッカーのワールドカップもあり、これらをフックにした付加価値の高い旅行提案を強化していく。国内でも、名古屋でのアジア競技大会の経済誘発効果が日本全体で約2兆円と試算されていることを紹介し、インバウンドと国内旅行でのプラス効果に期待を示した。また、2027年の横浜・国際園芸博覧会(グリーンEXPO)に向け、大阪・関西万博の流れを生かし、観光活性化につなげたい考えだ。
このほか、高付加価値旅行の推進や観光DX、地方空港の国際化など、官民連携による持続可能な観光への取り組みを強めていく。特に、世界で人気のアドベンチャートラベルは「日本の有望市場になりえる」とする一方、知的好奇心が旺盛な外国人旅行者を満足させるガイド養成を課題とし、取り組んでいく考えだ。クルーズも「まだまだ未成熟。大きな成長可能性を秘めている」とし、国の「日本のクルーズ人口100万人」の目標にあわせ、関係団体とマーケット拡大に取り組んでいく。
髙橋氏は、日本の観光の最大市場である国内旅行も、人口減少による市場縮小が懸念されるとして「大きな課題」と話した。今後の市場拡大には「旅行の平準化が不可欠」とし、そのための平日の休暇取得が可能な環境作りとして、今後もラーケーションの普及を推進していく。休日数を拡大する自治体や、学校単独での導入の動きも増えているという。
なお、懸念される中国との関係性については「旅行業界として一刻も早い関係正常化と双方向交流の回復を望む」と話し、動向を注視する姿勢を示した。現在のところ、団体旅行には影響がでているが、個人旅行には大きな影響は及んでいない。ただし、航空会社の路線減便・運休が広がる中、繁忙期である春節期間の需要については、影響を懸念している。
