新生DeNAトラベル、社名変更の意味から海外展開まで今後の戦略を聞いてきた

DeNA中野社長

ゲーム事業や球団経営で知られるDeNA。その子会社として“DeNAトラベル”を運営してきたエアーリンクが、社名を「DeNAトラベル」に変更した。これまでと事業形態が変わることはないものの、名実ともに“DeNA”のトラベル事業分野でさらなる飛躍を目指す。

オンライン旅行会社(OTA)が乱立するなか、2007年から海外航空券のオンライン販売を加速し始めた同社。その強みはどこにあるのか。また、未来を見据えた戦略は――?

「IT企業に必要なのは、意思決定の早さとチャレンジャー精神」と話す中野正治社長に話を聞いてみた。



社名変更の理由は? -DeNA

トラベルとしてブランド確立

「一義的には、“DeNAトラベル”の知名度を上げること。ブランディング戦略のひとつだ」——中野氏は、社名変更の背景についてそう説明する。エアーリンクがDeNAの子会社になったのは2006年7月のこと。翌年には、ソネットとエイチ・アイ・エスが共同で立ち上げたOTA「スカイゲート」をDeNAが買収、2008年に両社が合併した。サービスを「スカイゲート」(現DeNAトラベル)に統一、本格的にオンライン事業に進出し、スカイゲートの事業に注力していくことになる。

ゲームやeコマースなどオンライン事業の領域を拡大してきたDeNAは、オンラインとの親和性が高い旅行分野に注目してきた。スカイゲートは、2013年10月にDeNAグループ間でのシナジーをより強固にするべくサービス名を「DeNAトラベル」へ改称。さらに、今回、エアーリンクの社名もDeNAトラベルとすることで、さらにDeNAトラベルとしての認知度を高めていく考えだ。

主力となるDeNAトラベルのトップページ

DeNAが進めるキュレーション事業など他コンテンツとのシナジー効果も期待されるところだが、中野氏は「一般的な旅行予約の流れからすると、そう簡単にはいかないだろう」と話す。ただ、DeNAトラベルに分かりやすく整理したことで、「マーケットでの価値は高まる」と期待は大きい。

 

DeNA

トラベルの戦略 -商品力とテクノロジーで第三極の存在感

既存の大手旅行会社とOTAとの垣根は以前に比べると低くなった。既存の旅行会社もオンライン化を進めているが、中野氏は「(大手旅行会社は)リアルの店舗とのカニバリゼーションの観点から、どこまでのスピードでオンライン化を進めるのか分からいなところもある」と話す。一方、OTAのなかには既存旅行会社との協業を模索する動きもある。DeNAトラベルが、今後成長していく上での立ち位置はどこにあるのだろうか。

中野氏の答は明快だ。複数のグローバルプレイヤーと提携していることなどから、OTAに対しては商品力を強みにし、継続的なシステム投資を通じて、既存旅行会社に対してはテクノロジー及びネットマーケティングの強みで勝負する。つまり、DeNAトラベルは、「既存旅行会社とOTAとの中間、第三極として事業を拡大していく」方針を掲げる。

また、中野氏は同社の事業スタイルとして、取引成立で利益を得るトランザクション型(DeNAトラベル事業)、他社との提携で集客を図るプラットフォーム型(auトラベル)、広告料で利益を上げるコミュニティー型の3つを挙げる。基本はトランザクション型ビジネスで、今後もこのスタイルに磨きをかけていく考え。

プラットフォーム型については、今年4月にKDDIと共同で「auトラベル」の提供を始めた。24時間予約機能に加えて、au WALLETポイントの獲得も可能にするなど、auユーザーに利点の多いサービスを提供することで集客を増やしていく。

auトラベルのサイト。スマホなどモバイルフレンドリーなつくりだ。

このほか、情報キュレーションアプリ「グノシー(Gunosy)」内に「DeNAトラベルチャンネル」を開設し、グノシーユーザーに対して、旅行商品の提案をする取り組みも始めた。「本格的な展開はこれから」(中野氏)のようだが、こうしたコラボレーションによる集客力アップには大きな期待を寄せ、「auトラベル以外にもプラットフォーム型を広げていきたい。今後一年で、2、3つは実現できるのではないか」との展望を明らかにした。

コミュニティー型については、「まだ先の話」の様子。中野氏は「SNSによる集客は今後の課題のひとつ」との認識を示す。


DeNA

トラベルが目指すこと -取扱高1000

億円を目標に、海外展開も着々と

中野氏はユーザーの予約トレンドについても言及。スマートフォンでの予約が増えており、現在のところ、同社の比率は30%強だという。ただ、比較検討はスマートフォンで行い、最終的な予約はPCで行う傾向も強いことから、「スマートフォンとPCとの同期化を図り、シームレスに予約できるサービスを強化していきたい」と話す。

また、先々のスマートフォンの可能性について、「当日予約やレストランなどのタビナカ予約なども考えられるのではないか」との見方を示す。一方で、旅行以外の分野での多角化については、「連続性のないジャンプをする時期ではない」と否定した。

DeNAトラベルは今年4月末から海外展開もスタート。まずはオーストラリアから、訪日旅行の取り込みだけでなくグローバルな事業展開を目論む。「海外旅行および国内旅行マーケットの伸びがあまり期待できないなか、うまくいけば、2020年ごろには海外発着が日本発着を上回るのではないか」と期待も大きい。今後は言語対応や通貨対応を進めながら、香港、アメリカなどにも事業を拡大し、「大きな成長が期待できるアジア市場に1〜2年以内に進出、そこをメインとしたい」と将来を見据える。

現在は、ローカルのメタサーチに乗る形で地域展開を図っているが、「今後数年のうちに自前のローカルマーケティングで進出していきたい」考えだ。

「もう一段成長率を上げたい」と中野氏。年々、オンライン比率は拡大しており、「あと5年は拡大を続け、オンライン化するパイは数千億円から1兆円ほどになるのではないか」と予想している。海外への事業展開と合わせ、こうしたビジネス環境を背景に、「取扱高を現在の400億円から今後3年で1000億円に上げていく」と意気込む。

「我々はチャレンジャー。意思決定を早くして、さらに飛躍を遂げたい」。DeNAトラベルの今後に注目だ。

DeNA中野社長
  • 記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹
  • 聞き手:トラベルボイス編集部 山岡薫

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