JATA田川会長が語る2016年旅行市場動向、中国行き減少は底打ち、訪日旅行は地方空港がカギ

日本旅行業協会(JATA)は、2016年1月7日、恒例となる新春記者会見を行った。会見では、会長の田川博己氏が国内・訪日・海外旅行の市場動向についての見解を説明。また、今年の取組み方針では、特に「海外旅行の復活」に挑戦する決意を表明した。また、話題となっている民泊や北海道新幹線開業への見解にも言及。新春会見での田川氏の発言をまとめた。


海外旅行: 復活へのチャレンジ、中国の減少は底打ち

苦戦が続く海外旅行は、一定の時間が必要であるものの回復基調に。理由としては、原油下落で燃油サーチャージが下がり、円安であるものの旅行商品の価格が抑えられていることやクルーズの発着回数が増えていることを挙げた。

こうした状況のなか、JATAとしては海外旅行の復活へ「チャレンジする」。昨年は大規模な訪中団を行うなどの仕掛けをしてきた年との位置づけで、今年はその「実を取りに行く」考えだ。

特に、ボリュームが大きな中国・韓国への送客についてはフックとなるイベントを企画するなどで旅行需要を醸造する空気感を作っていく。田川氏は、中国への日本人旅行者の減少が底を打っているとみているといい、今後は「着実に伸ばしていくことができる」と意気込んだ。

また、1月中旬に予定しているパリの視察団についても言及。減っている日本人旅行者の現状から、今後の旅行素材の確保が厳しいことにならないように関係各所との関係性を高めてくる方針だ。

さらに「世界で日本人旅行者の評価は高く、すでに量的なことよりも質的なものを求められ始めている」と語り、質の重要性にも言及。ビジネスとしては一定のボリュームが必要であるものの、それだけでなく質的なことを考える段階にきているとの見方を示した。

複雑化する世界情勢については旅行業の中で前提条件としていくべきとの考えを示した。世界では脅威は当たり前のこととしていることに触れ、「日本の旅行業でも、やっていくべき」とした。


国内旅行: 日本人は新たなステージに、北海道新幹線は東北との連携を

国内旅行では、北海道新幹線、テーマパークなどイベントが多く、旅行意欲は堅調とみる。また、日本人の国内旅行が新たなステージに入っており、「提供する側としても商品ジャンルや中身を精査して出していく時代になっている」と考えている。

3月に開業予定の北海道新幹線については、東北との連携を提案する。東北復興事業では、「観光業界の出番が来ている」として注力をしていく考え。そこで、函館までの北海道新幹線のルート上にある東北を組み込んだ広域観光ルートを提案する。

また、開業前の課題にも言及。開業時の終着点となる函館から先の道筋が見えていない、として送客に向けた具体策を策定していくことを提言。函館までの開業が、札幌までの通過点として見過ごされないよう、地域からの情報発信を求めた。


インバウンド: 今後のカギは地方空港の活用、リピーターが増えれば地方にも

JTB総研の予測では2016年の訪日客数は2割増の2350万人。田川氏は、さらに上をいくだろうとの考え方を示した。しかし、2015年はMERSの影響で中国人旅行者が韓国から日本に流れた数値もあることから予測通りの着地も想定している。

田川氏が今後のカギとなるとみるのが、日本の地方空港の利用。欧米では需要増加にはチャーター便を活用するが、日本では欧米並みとなっていない。地方から世界をつなぐことが、ツーウェイツーリズムの促進につながるとの考えで、利活用のための規制緩和が重要である見解を示した。

地方への外国人の送客では「(長期的にみれば)心配しなくていい」との考え方。現在のゴールデンルートへの外国人旅行者の集中は、かつての日本人旅行者が初めての旅でロンドンやパリを選んだのと同じ状況で、長い目線でリピーターが育てば地方に向かうと考えている。ただし、そのための仕掛けも必要で、かつてドイツが「ロマンチック街道」を育てたように広域観光ルートをどう外国人にアピールしていくかが重要とみている。


その他: 民泊は地方創生とは別問題、障害者差別法にも適切に対応

現在、議論が続いている民泊では、今年はある一定の結論がでる見込み。JATAとしては、旅行業法に基づいて旅行会社が取り扱うことができる制度を求めている。特に、観光資源として日本的な体験を提供できる町屋などが新たな素材として注目している。

田川氏は、こうした民泊を旅行業が“宿泊”として扱うためは「管理ができている状況が必要」との考え方を強調。天変地異があった時に宿泊者の身元確認ができることなどを前提条件として、「消費者保護、住民との関係ができることが一番重要」と話した。

また、民泊は地方創生とは関連しないとの見方も示した。地方には、個性的な旅館が数多く、日本的な体験は旅館が提供できるとの考え方だ。

このほか、今年は障害者差別法がスタートする年。旅行各社が適切に対応できるように、会員各社向けの業務用マニュアルを用意し、説明会も行う。会員旅行会社専用の相談窓口も設置する予定だという。

3年目を迎えるツーリズムEXPOへの意欲も高い。3年目の今年はホップ・ステップ・ジャンプのジャンプの年にあたるとして、さらなる充実を図る方針だ。

トラベルボイス編集部: 山岡薫


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