星野リゾート代表が語った「インバウンドは簡単に戻らない」、コロナ期の最大の進化と予約変化、訪日旅行の復活への見立てとは?

星野リゾートは、メディア向けオンラインイベント「星野リゾート LIVE 2021 秋」を開催し、代表の星野佳路氏がコロナ禍での進捗状況と今後の展望などを語った。

星野リゾートでは昨年の新型コロナの発生時、パンデミックによる危機の長期化を予測。ワクチン接種などで状況が収束に向かう時期を2021年9月~11月とし、それまでの18カ月を生き抜くサバイバルプランを計画した。感染拡大期と縮小期に合わせて需要を取り込んできたコロナ期に対して、星野氏は「(予想)当時とだいぶ内容が変わってきたが、大枠では予想したとおりに推移した」と、一定の評価を示した。

最大の進化はマイクロツーリズム

その要因の1つは、コロナ発生後に掲げた3つの基本方針「キャッシュの維持重視」「人材維持で復活に備える」「優先順位の変更」に取り組んだこと。特に危機下においては「社員に我々の考えを伝えることが大切」と、全社での状況の理解浸透のために社内への情報発信に注力。社員とともに創意工夫を凝らして危機への対応に取り組んだ。その結果、同社は全国規模でほとんどの人材を維持。星野氏は「コロナ禍で失った利益は戻ってこないが、人材はコロナ後の需要獲得に不可欠なリソース」との考えを示し、今後の巻き返しの局面で人材が最重要であることを強調した。

もう1つは、マイクロツーリズムに本格的に取り組んだこと。星野氏は、マイクロツーリズムで商圏を設定したことが「2020年~21年の最大の進化だった」と評価した。

星野リゾートでは各商圏でマイクロツーリズムのキャンペーンを展開し、地元メディアでの情報発信を強化。QRコードから地域限定の特設サイトへの流入を促進して、宿泊施設周辺の地元読者にアピールする情報や特別プラン、価格を提供して需要を獲得した。これにより、例えばインバウンド客が多かった「星のや京都」でも、「利益確保に成功」(星野氏)。マイクロツーリズムだけを見れば、2021年は2019年比で約300%に成長する見込みだという。

最近の予約の変化とインバウンドの回復予想

この18カ月の予約状況について星野氏は、「第1波~第3波は感染拡大にあわせて大きなキャンセルがあったが、第4波、第5波ではあまり変動がなかった」と、最近の予約の変化を話した。この理由については「コロナ禍における生活の仕方や、旅行は大きなリスクがないことがお客様に理解していただいた」と、コロナ期における旅行者の変化を指摘。特に同社の「最高水準のコロナ対策宣言」を踏まえ、「星野リゾートでのコロナ禍での利用の仕方が理解された結果」と、同社独自の感染対策の効果も強調した。第5波が終わりつつある今、予約は順調に戻ってきているという。

第4波と第5波の予約の動きは、それ以前と異なるという

長期的展望では、インバウンドの回復時期を「2025年の大阪万博に向けて戻していくのが、当社そして国全体としても大切」と、慎重な見方を示した。回復の前提は、国内での希望者へのワクチン接種の終了と入国時の隔離免除で、ワクチン接種は11月には終了(政府発表)し、隔離免除は「今冬~来春にかけて」と期待する。

ただし、訪日旅行の再開は全世界同時ではなく、国ごとになると予想。その理由としては、各国で接種が進むワクチンの種類が影響するとみている。訪日旅行の7割を占めるアジア圏は現在、日本が承認するメーカー以外のワクチン接種が多いことから、早期の隔離免除は難しいのではないかと予測。逆に、日本と同じワクチンの接種が進む欧米の方が再開が早いとみるが、その市場は訪日全体の3割以下。そのため「インバウンドは簡単には戻らない」との考えだ。

インバウンド再開と回復予想

GoToは再開待ちの買い控えを懸念

観光支援であるGoToキャンペーンについては、昨年の経験を踏まえ、「シンプル&継続」「需要の下支え」が重要とする。訪日需要回復までの継続的な展開や運用・制度の分かりやすさ、ワクチン・検査パッケージの導入などの制度設計を提言した。

昨年末に、感染拡大によってGoToキャンペーンが急遽停止となった際は、旅行会社や宿泊施設、事務局は膨大な事務作業に追われた。こうした経験から、感染状況によって中断される設計ではく、感染状況が動いても継続できるような設計をすることで事務作業を減らしていくことが望ましいと訴えた。利用者にとってシンプルでわかりやすいものであることも、ひいては事務作業の簡易さにもつながる。

また、コロナ前から供給過剰となっていた都市部の宿泊施設は、インバウンドが戻るまでは苦境が続くことが予測される。GoToは、感染拡大の要因として非難されることも多い。こうしたことから、GoToが観光需要を盛り上げるというよりは、観光事業者を下支えとなる存在であることが望ましいとの考え。このためには、「補助率を下げることは選択肢ではないか」と提案した。

そして、星野氏が事業者にとって「一番大きな課題」として強調したのは、GoToの再開待ちによる買い控えの影響。同社の予約でも、その状況がみられるとし、「開始時期の早期決定が必要」と要望した。

現在、星野リゾートでは、GoTo再開前に予約をした人が、GoTo再開後に制度にあった料金に自動的に切り替わる仕組みの準備や、GoTo再開後にキャンペーンが中断した場合の予約をGoTo適用時の価格に据え置きするための準備を進めている。

また、11月以降に、ワクチン・検査パッケージの正式導入を予定も発表した。

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