相乗りタクシー「ニアミー」、観光客と地域住民の予約組み合せで満足度向上と効率化、AIエージェントも本格導入へ

相乗りタクシーやシャトルサービスを展開するNearMe(ニアミー)は、空通空白の解消や観光の足としての移動課題の解決に向けて、事業者および自治体との協業を強化する。同社は、独自のAI技術を活用した最適なルーティングと利用者のマッチングで、これまでエアポート・シャトルや地域の足としての「シェア乗り」を拡大してきた。

同社社長の高原幸一郎氏は事業戦略発表会見で「限られたタクシー資源を、交通事業者一社でなく、地域全体で活用し、自由に移動でき、住みたい街に住み続けられる社会の実現を目指していく」と話すとともに、国が訪日客6000万人を目指すなか、移動の需要と供給のミスマッチの課題を解決することで、「観光を通じて地域が持続可能に生きる国としての観光立国に貢献していく」と意欲を示した。

国交省プロジェクトとして深夜時間帯の移動課題に対応

交通空白の解消に向けて、同社は、国土交通省が進める地域交通DX推進プロジェクト「COMmmmONS(コモンズ)」に取り組んでいる。リアルタイム相乗りマッチングシステムを活用し、「ミッドナイトシャトル渋谷」および「ミッドナイトシャトル三鷹」を開始した。利用者が終電後も安心して移動できる環境を整え、地域や都心部の夜間交通需要に柔軟に対応していくものだ。

渋谷エリアでの展開では、夜間需要が集中する駅周辺・繁華街を中心に運行することで、タクシー不足や混雑による移動ストレスの軽減を図る。三鷹エリアでは、JR三鷹駅を起点として西、北、南の地域の住民が終電後でもスムーズに帰宅できる移動手段を提供する。

「COMmmmONS」は、地域交通の「リ・デザイン」を加速させるプロジェクトとして2025年6月からスタートした。サービス、データ、マネジメント、ビジネスプロセスの4つの柱でデジタル技術を活用した課題解決のベストプラクティス創出と標準化を一体的に推進し、その横展開を図ることで、社会の共通財産となる技術的アセットを生み出す新たな取り組みだ。

現在、交通空白地域が全国で2500カ所ほどあるといわれるなかで、国交省総合政策局モビリティサービス推進課統括課長補佐の内山裕弥氏は「様々な交通モードが連携・協調することで、持続可能な地域交通の仕組みを構築していく」と説明。地域の中小事業者の間で事業の分断が起きているなかで、インターオペラビリティ(相互運用性)を確保し、サービスのデジタル化だけでなく、産業構造全体の変革を産官学共同で進めていく。2025年度はこのプロジェクトに20件が採択された。

(左から)ニアミーの高原氏、国交省の内山氏、熊本県観光文化部部長の脇俊也氏、西武ホールディングス経営企画本部西武ラボ課長補佐の青木啓史氏。
熊本県は南阿蘇エリアでのニアミーを含めた既存交通機関を活用したモデルルートの開発、
西武はホテルでのインバウンド対応でのニアミーの活用事例をそれぞれ紹介した。

経路検索サービス、中国LCC、自治体とも連携

ニアミーは、事業パートナーとの協業も強化する。羽田空港への「エアポートシャトル」では、経路検索サービス「駅すぱあと」および「Yahoo!乗換案内」との連携で、東京メトロ赤坂見附駅および京王線笹塚駅の2路線で、24時間対応のオンデマンド運行を実施。「駅すぱあと」と「Yahoo!乗換案内」での検索結果でも、この2路線の「エアポートシャトル」が表示されることで、従来の鉄道・バスに加え、より柔軟で快適な移動手段を提供する。予約は希望の時間に合わせて前日18時まで受け付け。今後、街中の「仮想停留所」の拡大を進めていく。

また、インバウンド対応も強化。中国のLCC春秋航空とシステム開発会社の阿宝と連携し、空港送迎型のエアポートシャトル、街中でのタクシー、貸切ハイヤーなどを提供する仕組みを構築。春秋航空のアプリで情報を提供し、阿宝のシステムを通じてニアミーでの予約が可能になる導線を確保する。また、中国人旅行者向けには、2026年度中にWeChatミニアプリを導入する予定だ。

高原氏によると、ニアミーの国別ユーザー数で、中国は12位。月間100万人を超える中国人訪日旅行者全体から見ると、「認知度が低く、まだまだアプローチできていない」(高原氏)。同社では、この潜在需要を捉えるとともに、課題となっている白タク送迎の解決にも取り組んでいく考えだ。

インバウンド旅行者向けには、ホテルや旅行会社とも提携。空港送迎やタビナカでの移動でのシェア乗りの手配で、移動サービスの向上と業務負担の軽減を支援していく。

さらに、ニアミーは地域の足として自治体との協業を進めてきたが、さらに「観光の足 × 地域の足」の戦略も展開していく。観光客と地域住民、異なる予約導線の注文を組み合わせることで利用満足度とタクシーの運行効率の向上を目指していく。2025年度中には沖縄県南部エリアで取り組みを開始する予定。さらに、札幌市では2025年度中にまず観光客向けのサービスを開始し、その後「地域の足」を組み合わせる取り組みも進めていく計画だ。

このほか、事業戦略発表会では、日本マイクロソフトと連携し、AIエージェントを活用したサービスの本格導入を目指していく方針も示された。

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